「トヨタグループのホテル」元支配人が明かす、親密な付き合いとなる“女性”との出会い
「トヨタ」といえば、おそらくほとんどの人が、「クルマ」と答えるのではないか。2021年、トヨタグループ全体の世界販売台数は約1050万台を記録。トヨタは名実ともに世界的な自動車メーカーであり、今やそのイメージは世界のどこに行っても揺るがない。
そのトヨタが、トヨタグループの会員制保養所を経営しており、一般のゲストにも開放している。こう話すと、かなり高い確率で「知らなかった」「初耳だ」という反応が返ってくる。
「トヨタの車」と「トヨタグループのホテル」。製造業とサービス業である両社は、一見しただけでは対極に位置しているように映る。ところが見えない部分で脈々と通じ合うものを共有している。いったいそれは何なのか……。
2005年の開業当初よりホテル運営に携わった馬渕博臣氏の著書『レクサスオーナーに愛されるホテルで学んだ 究極のおもてなし』(KADOKAWA)よりお伝えする(以下、同書より抜粋)。
なぜレクサスは乗り心地がいいのか?
トヨタマンやレクサスオーナー以外のゲストが「テラス蓼科」(トヨタグループの保養施設)に来るようになってから、さらに客層は広がっていき、私はその変化を楽しんでいた。あるとき、外国の高級車からレクサスに乗り替えたというゲストと話をする機会があった。
「レクサスの乗り心地は外国車よりもずっといい」。これがその方のレクサス評だった。外国車のシートなどは、確かに豪華に見える。ただし、体で感じる乗り心地のよさはレクサスのほうが上だというのだ。私はそこで、「その要因は何だと思いますか?」と尋ねてみた。するとその方はしばらく考えて、「何というか、“緩み”かな」と答えたのだ。
外国の高級車は、キチキチとしすぎて、お堅い感じがするらしい。それに対してレクサスには緩さと温かみがあるという。その後、このゲストの方はテラス蓼科のリピーターとなり、あるときに「馬渕くん、このホテルの魅力は緩みだよね」と言ってくれたことがあった。
ホテルの制服を着たことがなかった
外資系の高級ホテルは豪華で立派だが、サービスが型にはまった感じでギスギスするらしい。一方、テラス蓼科ではビジネスライクな部分を感じないため、リラックスできると言ってくれたのだ。私はそれを聞いてとても嬉しくなった。
事実、マネージャー職に就いてからというもの、私はホテルの制服を着たことがなかった。ゲストからゴルフに誘われることも多いため、ゴルフウェアを着たままでゲスト対応をしたり、ポロシャツ姿で受付に立ったりしていた。
そのスタイルを通したのは、黒服とネクタイ姿でゲストを迎えるよりも、脱ホテル感覚で接したほうがアットホームなおもてなしができると考えたからだった。図らずもリピーターのゲストの方から「このホテルの魅力は緩みだね」と言われ、自分たちの実践してきた「おもてなし」が間違いではなかったと思うことができた。