核兵器がロシアの最終手段か。「ウクライナ侵攻」で考えられる2通りのシナリオ
あえて人道回廊を使う人はそうそういない
――いわば、敵国にしか逃げる先がない道なんですね。
小泉:たとえ戦地から逃れたとしてもどんな生活ができるかはわからないですよね。家も仕事もなくて家族と離ればなれになるというのは、これもう難民です。そんな未来が見えているのに、あえて使う人はそうそういないと思いますよ。しかもロシアは、人道回廊に砲撃をし始めましたし、地雷を埋めていたという話もあります。さらにその砲撃を「ウクライナが人道回廊に大砲を打ち込んで、罪もない避難民を殺している」と流布しているんです。
また今後、首都キーウなどを本当に陥落させるときには、多くの民間人も巻き込む無差別攻撃は避けられないはず。今でも無差別ではありますが、ロシアの言い分からすると「人道回廊はつくってあるから、逃げたければ逃げているはずだ。ウクライナに残っている人は民間人ではなく、戦う意思がある戦闘員だけだ」という主張。
かつてロシアは、このロジックを用いてシリアのアレッポという都市などを、民間人を含めた何万人という人を殺しながら町がなくなるまで攻撃しました。
核兵器が使われる可能性はあるのか
――直球な質問ですが、核が使われる可能性はありますか?
小泉:もしNATOやアメリカ軍が乗り出してきた時、真正面から戦ったらロシアは勝てないと思います。では、ロシアが追い込まれた時にどうするかというと、最終手段として核を使うことは明らかですよね。アメリカもヨーロッパも手出しできない根本的な理由は、核なんです。
――ロシアが窮鼠猫を噛むように核を使うかもしれないということですね。私のような素人は、核戦争というと、世界が終わってしまう『北斗の拳』のような世界をイメージしてしまいますが、もっとリアルに核が使われる可能性はありますか?
小泉:リアルに考えられるシナリオは2通りあると思います。まず、ウクライナに対して、降伏を強要するための核使用。大きな被害がでるウクライナの人口密集地などを少数選んで核を使う。これは「これ以上戦争を続けると、国じゅうで同じことが起こりますよ」というメッセージを出すんです。もう1つは、NATOが参戦してこないように警告射撃として核を使うことが考えられます。ただし、NATOに本気を出させるとまずいので、こういう時は無人の平原や海の上などなるべく損害が出ないように核を使うというのがロシア軍の想定のようです。
――それはウクライナ国内のどこかですか?
小泉:世界中どこでも可能性はあります。例えばアメリカが介入しようとしているなら、アメリカ近くの海も考えられますし、ウクライナに降伏を迫る目的ならばウクライナの国土がターゲットになるでしょう。