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注目のアーティスト28歳が抱く違和感「日本で個性を出すことは大変」

暮らし

アメリカは差別の中にもヒエラルキーが

チョーヒカル

インタビュー取材時

――人種問題についても書かれています。中国籍で日本生まれのチョーさんですが、多種多様な人が住むニューヨークの生活は日本と比べて違いを感じますか?

チョーヒカル:アメリカは人種だけでなく、差別のグラデーションも濃くて多様ですね。日本における在日差別みたいなものもあれば、アジア人女性がまとめて性的なものとして見られたりするといった偏見もあったりして、有色人種のなかにもいろいろな差別のヒエラルキーを感じます。

 人種差別って「すべての人が同じフィールドに立っていて、それを人種によって区別する」ことではなく、「社会構造上人種やアイデンティティ間にすでに特権や差別があり、個人の意識だけではなくそういった構造を鑑みなければいけない問題である」ことなのかなって。

 たとえば白人男性が黒人男性に何か言うことと、黒人男性が白人男性に何か言うことでは同じ言葉でも社会構造上、意味合いがまったく違うんです。日本だとアジア人が99%だし、日本国籍の人がほとんどなので、人種差別への解像度も上がりにくいのかなと思います。

家族のLINEグループで頻繁にやりとり

チョーヒカル

――家族とのエピソードも本書に収録されていますが、海外生活を経て、関係は変わりました?

チョーヒカル:現地からすぐ連絡取れるようにLINEグループを作りました。中国人、あるいはアジア人家庭がみんな同じなのかはわからないですが、私の家族は自分自身のことをあまり話さず、感情もあまり表にしない環境だったんです。私も話すことといえば学校の成績ばかりで、自分の悩みも家族にはあまり打ち明けてませんでした。

 母親とは一時期、仲が悪かったのですが、それでも一緒に暮らせるようになって、いまは昔より、やり取りしています。たまに父親が「海外で勉強をしていて誇りに思うよ」みたいなメッセージを送ってくれたり、私も留学であんまり話せる相手がいなかったときは、親に弱音をこぼしたりもしてます。

エイリアンは黙らない

エイリアンは黙らない

注目のペイントアーティストが綴る、毎日間違えて、へこんで、社会の不条理さにくじけそうになっても、怒って、戦って、考えて、自分の足で歩いていく覚悟を込めた「成長」と「主張」のエッセイ集

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