注目のアーティスト28歳が抱く違和感「日本で個性を出すことは大変」
大学在学中からリアルなボディペイントで注目を集めたアーティストのチョーヒカルさん(28歳・@soba_ba)。大学卒業後はフリーランスを経て、ニューヨーク州ブルックリンの高等教育機関「プラット・インスティテュート(Pratt Institute)」に留学。現在は現地の会社でグラフィックデザイナーとしても働いている。
今年1月にはエッセイ集『エイリアンは黙らない』(晶文社)を出版。中国籍で日本に生まれたチョーさんは同書で自分を「エイリアン(異邦人、よそ者)」だという。エイリアンであることをネガティブに捉えていた部分が変化した。日常のモヤモヤを、あえて口に出すことの大事さから、海外で感じた差別まで話を聞いた、前後編のリモートインタビューをお届けする。
ニューヨークで学んだことも大きかった
――過去の連載に書き下ろしを加えて、今、このタイミングで出版したのはなぜでしょう?
チョーヒカル:この本にも収録されている「ベター・ダン・セックス」という連載が終わって、そのあともルポ漫画(チョーヒカルのゲテモノデート「ねとらぼエンタ」)や単発エッセイを書かせてもらってたんですが、ここ数年、特に日本の政治などさまざまな箇所で問題が表面化してきたじゃないですか。SNSに限らず「主張」することの重要性を感じていたので、担当と今のタイミングで出すべきだ、という話をしていて、刊行することになりました。
初めてエッセイを書いていた頃は私自身の違和感をそのまま「こういうのがモヤモヤするよね!」って表明するしかできなかったのですが、2020年からまた雑誌の『tattva』(ブートレグ)や「ヨガジャーナルオンライン」で連載が始まったりして、いろいろ書く仕事が増えてきました。今はそのモヤモヤを噛み砕いて、「じゃあ、こうしたらよくない?」って主張できるところまで書けるようになったと思います。ニューヨークの留学で学んだことも大きかったですね。
モヤッとしたら携帯のメモに残す
――そもそも文章を書くようになったきっかけは?
チョーヒカル:個人ブログは書いてたんですけど、ちゃんと文章を書くみたいなことはやったことがなくて。それが2016年に、銀座の「ヴァニラ画廊」で個展を開催したとき、作家の雨宮まみさん(故人)と対談をさせてもらったんです。
そこで雨宮さんに「文章を書くのが好きで、そういう仕事もしていきたい」と伝えたら、たまたまその場にこの本の担当でもある編集者の方がいて、連載を立ち上げようという話になり、数か月、原稿を何度も書いては直し、書いては直しで、ようやく自分の文体が決まったり、テーマが決まったりして、連載「ベター・ダン・セックス」を書き始めました。
――本書を読んでいると、学生時代のエピソードもあって、ここまでよく覚えているなと思ったのですが。
チョーヒカル:昔から何かモヤッとしたことがあったら、携帯にメモみたいなものを残してるんです。お仕事でエッセイを書かせてもらうようになってからは、ちいさい出来事も、なるべくメモをしてます。(本書の)「昔の恋人」のエピソードとかもそうで、誰かとケンカしたら必ず何か残しておきます(笑)。
あと、本当に生っぽい感情のときは、携帯のメモにとどめて自分だけで発散してますが、「これはちょっと面白い発見かも」みたいなのがあったときは、清書して、ツイッターに投稿することもあります。初期の頃は結構ハマって、恥ずかしいですが、アルファツイッタラーみたいなこともしてました(笑)。