黒字はアパホテルのみ…ビジネスホテル業界、身売り話も飛び出た要因は「五輪特需の大誤算」
宿泊療養施設化に先行したAPAは黒字を維持
この宿泊療養施設としての貸し出しを真っ先に開始したのが、10万超の客室を擁する業界大手APAグループ。全国で58棟の宿泊療養施設化を指揮した同社の元谷一志社長が、参画の経緯を振り返る。
「一度目の緊急事態宣言の際、政府筋から弊社代表の元谷外志雄に直接連絡がありました。『軽症患者の受け入れをしてほしい』と。社会インフラとして不可欠だと感じましたので、即断即決しました」
療養施設としての借り上げには、200室以上でエレベーター2基以上などのさまざまな条件がある。さらに、細かいゾーニングが不可欠。防護服着用が義務づけられるレッドゾーンも発生する。どのゾーンでの業務までホテル側が徒事するかによって自治体の借り上げ料金は変わってくる。
おのずと、小規模なビジホは療養施設の条件を満たせないため、前出のホテル関係者は「業界格差」が生じているというのだ。
APAグループは業界内で唯一黒字
実は、APAグループは業界内で唯一黒字を維持している事業者。2020年11月期の純利益は前期比95%減の9.5億円だったが、2021年11月期は「約50億円の黒字となる見込み」(元谷氏)だという。そこには、やはり宿泊療養施設として貸し出した影響があった。
「収益減の理由は、25%を占めていたインバウンド客が消えたことと、客単価の低下による収益率悪化にありましたが、そんな状況下でも昨年12月は83%の稼働率を確保できた。昨年は27棟、今年も17棟の新規開業を予定するなかで、高い稼働率を実現できたのは一定の成果。
嬉しい誤算は、療養施設としての貸し出しがリピーター獲得に繋がったこと。新型コロナに感染して初めてAPAを利用された方がその後も利用してくれるようになったのです。なかでもアンケートを見ると、無料開放したビデオ・オン・デマンドサービスが特に効果的で、驚くほど好評だったのです」(同)