住む場所や生活保護を諦める人も…“貧困問題に取り組む”上智大生らが見たリアル
長引くコロナ禍の影響により、不安定な生活を強いられ、中には住む場所を失った人も少なくない。“家で過ごす”という日常的な営みが揺らぎつつある昨今、10~20代の若者たちが「家あってあたりまえでしょプロジェクト」を立ち上げた。同プロジェクトは、年末年始に大宮駅周辺で、家を持たない人に声をかけ、行政からの支援が受けられるようにサポートする、という前衛的な取り組みである。
同プロジェクト代表を務める上智大学4年生の岩本菜々さん(@IwamotoNana)に、なぜプロジェクトを立ち上げたのか、実際に活動してみて感じたことなど話を聞いた。
“あたりまえ”の光景に違和感を抱いた
最初に同プロジェクトを発足した経緯について聞くと、岩本さんは「駅前にはホームレスの人々が何人も横になっている。ネットカフェには家を失った若者たちが滞在している。そんな光景が“あたりまえ”になっていることに、10代の頃からずっと違和感を抱いていました」と語る。
「コロナ禍になると、このような光景はよりいっそう一般化するようになり、非正規の若者や外国人労働者が次々と解雇されているというニュースが報じられるたびに胸を痛めていました。そんななか、『人々が平気で使い捨られているなか、自分自身で何かできることはないか?』と思い、若者の労働・貧困問題に取り組むNPO法人POSSEのボランティアに参加することにしました」
若者はみな“潜在的ホームレス”だと実感
その後、電話で生活相談を受けていたとき、「家を失った」「家賃が払えなくなり、アパートを手放して実家に戻ったが、親から暴力を振るわれている」「寮付きの仕事を解雇され、住む場所がなくなった」という若者からの声の多さに驚きを隠せなかったという。
「これらの相談から見えてくることは、『仕事がなくなるとすぐに家を失ってしまう』『住む場所を確保するために、ブラックな労働環境や家族からのDVを我慢しなければならない』という若い世代が置かれている凄惨な現実です。ホームレスになるということは、もはや若い世代にとって特別なことではなく、若者はみな“潜在的ホームレス”だと実感しました」
日本の現状にがく然としたと口にし、「これだけ苦しんでいる人が多いにもかかわらず、家を失うことは“自己責任”とされ、若者たちは高すぎる家賃や家を失う恐怖に苦しみながら日々を送っています。こうした状況を変え、『安心して住める住居が誰にでも保障される社会を作りたい』という思いから『家あってあたりまえでしょプロジェクト』を立ち上げました」