ニチレイ、「本格炒め炒飯」で30億円かけたハイリスクな投資に挑んだワケ
コロナ禍で在宅時間が増え、巣篭もり需要が生まれたことで、冷凍食品への関心が高まっている。最近では、外食企業が新たなビジネスとして家庭用の冷凍食品へ参入する動きも活発化している状況だ。数多くの冷凍食品があるなか、冷凍炒飯のパイオニアとして不動の地位を築いているのがニチレイフーズの「本格炒め炒飯」である。
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2001年に発売以来、20年間にわたって冷凍炒飯カテゴリ―の売上No.1を維持。さらに昨年は「年間売上世界No.1」としてギネス世界記録™にも認定された。株式会社ニチレイフーズ 家庭用事業部 家庭用商品グループの竹本亮太氏へ、本格炒め炒飯がロングセラー商品になった理由や今後の展望について話を聞いた。
“中華風の混ぜご飯”ではない炒飯を
まず、本格炒め炒飯を市場に出した背景について「お店で食べる炒飯のような、本格的な商品を出したかった」とし、竹本氏は次のように説明する。
「冷凍食品は家庭用の冷蔵庫が普及するにつれ、家庭の食卓やお弁当の一品に用いられるようになりました。さらに時代の変遷とともに冷凍食品の持つ利便性や簡便さ以外に、味の美味しさも求められるようになってきた。これまでも冷凍炒飯の商品はありましたが、言ってしまえば“中華風の混ぜご飯”という感じで、お店で食べるような炒飯とは言い難いものでした。
そこで、家庭では手作りできないパラパラとした食感と本物の炒め感を再現した商品開発に乗り出したんです」
ニチレイフーズの技術開発センターは製造設備の開発機能をもっており、当時、どこにも存在しない製造装置を独自に開発。プロの味を再現するべく、中華料理店でプロが炒飯を調理する工程を参考に、米の加工から炒め機への材料投入、凍結、包装まで一気通貫で行う製造ラインを完成させたという。
リニューアルは売り上げ減少を覚悟
プロが作る炒飯づくりの手順を、いかに大量生産できる製造体制に落とし込めるか。そして、既存の冷凍炒飯とは一線を画す美味しさを生み出せるか。このような考えのもと、およそ3年以上におよぶ開発期間を経て2001年に本格炒め炒飯を市場に投入した。
さらに発売して終わりではなく、何度もリニューアルを実施し、美味しさの追求を愚直に行ってきた。なぜ、毎年のように味やパッケージをブラッシュアップし続けているのだろうか。竹本氏は「一度で満足せず、お客様の期待を超えるような炒飯を目指している」と話す。
「毎年、リニューアルを行ってきましたが、お客様の離反や売り上げの減少といったリスクも覚悟しながら取り組んできたんです。それでも、飽くなき本格的な炒飯の味を追い求める姿勢を変えずに、一歩一歩商品の改良を加えてきました」