IT嫌いのオーナー社長を説得するには?社内政治に必須「根回し」のコツ
「トップアプローチ」は慎重に
そこまでしても上司や担当者が動いてくれないなら、初めてトップアプローチを考えます。ただし、いきなり正面突破は厳禁です。ポイントは、裏の組織図をもとに、直接の仕事以外の場でゆるく意思決定者とつながることです。出身校の集まりに参加する、趣味の場で交流を持つ、行きつけの店を探ってアプローチするなど、方法は何でもOKです。
そして、実際に意思決定者に会う機会をもらえたら、そのことを上司や担当者に事前にきちんと伝えておきましょう。「偶然ですが、意思決定者の××専務と私が同じ大学のゼミの先輩・後輩で、2週間後にゼミの卒業生の飲み会があります。場合によっては、××専務とお話しするかもしれませんが、仕事の話はしないでおきますね」などと伝えておけば、彼らは安心します。
ここで黙っていたり、事後報告するのはアウトです。仕事の場ではなくても、面子を潰されたと感じる人もいるからです。どんな形であれ、上司や担当者にとって「自分を飛ばされること」は不安材料にしかなりません。その場で大した話ができなかったとしても、あとできちんと報告しましょう。「いざとなったら、トップに直接アプローチできる」というカードを見せておくことで、上司や担当者をけん制できるからです。こうなると、あなたを無下にはできなくなります。
いずれにしても、仕事相手の面子を潰すような真似だけはしないことです。30代も中盤を過ぎると、面子が何よりも大事な人が増えてくるもの。それを潰してしまうと、進むものも進まなくなります。そんなケースをこれまで私も何度も見てきました。
根回しは「分子」と「分母」で考える
上だけの根回しは30点です。根回しは、上だけでは不十分です。足元をすくわれる恐れがあるからです。根回しは「分数」のようなものだと考えてください。「分子」と「分母」、それぞれの根回しが必要になるのです。「分子の根回し」とは、先ほどご説明した「上への根回し」です。一方、「分母の根回し」とは、「現場への根回し」です。
分子が承認を得るために必要な交渉部隊だとしたら、分母は承認を得たプロジェクトをスムーズに進めるための「実行部隊」。双方に味方を増やしておくことで、よりスピーディに結果を出すことが可能になります。しかし、現実には多くの人が自分の提案を通すことばかりを考えて上への根回しに集中し、現場への根回しを怠りがちなのです。
その結果、上のOKをもらっても、「そんな話は知らない。私たちを無視するなんて面白くない」と現場の反発を買ってしまうのです。結局、上が決めても、現場がノーと言えば物事は動かないのです。
「経営会議で決まったから」と目上の人の名前をチラつかせたところで、動いてもらえるとは限りません。そもそも、上の権威を借りないと説得できないのでは、ダサいですよね。だからこそ、分子(上への根回し)と分母(現場への根回し)の両方を同時に進めていく必要があるのです。