ALSOK子会社で、違法残業1876時間と残業代482万円を放置された現役社員が実名告発
放置され続けた違法残業代の請求
約1年ものあいだ、1人で2人分の勤務を無理してでも小又氏がこなしたのは、新規の仕事を獲得するチャンスを逃すことは会社の大きな損失につながるとわかっていたにほかならない。また、残業代が未払いになるとは想像もしていなかった。
「いまは働き方改革と言って、労働内容や残業時間についてのルールが厳しくなっています。でも法改正以前は、会社から『残業代はキチンと払うから、頼むよ』といった軽い感じで残業を頼まれるということが当たり前の時代がありました。それはきっと、ALSOKだけじゃないと思います」
約1年の勤務を終えた小又氏は、2020年12月、いっこうに振り込まれない残業代(残業時間1876時間、金額約482万円)を請求したが、会社側から反応はなかったという。もちろん、そのあとも再三にわたり請求し続けた。しかし、どこで話が止まっているのか、違法残業代は放置され続けた。
「会社には何度も警告しました。それでも支払われないし、違法残業代に関する話題自体をスルーされたんです。このままでは、労働基準監督署に相談するしかなくなることも伝えました。それでも放置されたので、今年2021年2月、これはもう労基署に告発するしかないと思い立ったんです」
消されかけた月平均220時間残業
横浜西労基署へ行ったこの時点では、小又氏はまだ労働組合を結成していなかったため、いち労働者として相談している。
「しかし、労基署から連絡を受けた会社側は、驚くようなことを言ってきたんです。『私たちは、勤務記録にある分だけ支払います』と。耳を疑いました。勤務記録の改ざんを指示してきたのは会社側なのにです。
なので、私は『記録のない時間帯は誰が勤務したのですか? 顧客から委託料だけ受け取って、警備員は配置しなかったのなら、顧客に対する契約違反であり、架空請求なので、顧客に告発します』と言いました」
すると会社側は態度を翻し、2021年5月14日、横浜西労基署より是正勧告されたALSOK昇日セキュリティサービス株式会社は、月末までに労働基準法違反の再発防止対策を報告することと、小又氏に違法残業代を支払うよう指導を受け、違法残業代を5月末に支払うことを約束した。