藤原季節「立ってるだけで怖い」一人娘を失った父親役の古田新太に感激
他人からの言葉に耳を澄ませていないと
――え、捨て犬界での頂点になりたい?
藤原:自分の武器って自分ではなかなか分からないから、他人からの言葉に耳を澄ませていないと(笑)。吉田監督が僕を捨て犬っぽいとおっしゃってくれたのは、「監督のお墨付きをいただいた。しめしめ」みたいな。世の中のクリエイターの方々には「捨て犬感の必要な役を求めているなら、僕ですよ!」と胸を張って行きたいです!
――古田さんは、現場ではどんな方でしたか?
藤原:毎日一緒に居過ぎたせいか、みんな、すごい俳優だと言っているけれど「このおじさん、そんなにすごい人なのかな?」と疑いかけたり(笑)。僕がエビフライを食べていて、古田さんは隣で泣いているシーンがあったんです。
カットがかかった瞬間に、古田さんは涙をパッと拭いて、「もったいないだろ」とか言いながら、残った僕のエビフライを食べちゃったんです。そのまま隣のエキストラさんのビールも飲んじゃったりして、「ほんとに、なんなんだろう、このおじさん(笑)」と思っていたんですけど、完成した映画を観たら、もう素晴らしくて。
古田新太さんは日本のヒース・レジャー
――確かにすごかったです。
藤原:立ってるだけで怖くて、『ダークナイト』のヒース・レジャーみたいでした。本当に古田さんの演技には感激しました。古田さんと松坂桃李さんの海辺のラストシーンや、古田さんと片岡礼子さんのシーンの撮影で、監督は「もっとも大事にしたかったものが撮れた」という実感があったみたいなんです。古田さんのあの表情が撮れたから、ほかのシーンはそこに向かって積み木を積み上げていく感じだったのだと思います。
――古田さんとは船でのシーンもありましたが、藤原さんは子どもの頃、船に乗られていたとのことですから、船酔いは大丈夫でした?
藤原:それが、めちゃくちゃ船酔いするんです、僕。だから酔い止めの薬をたくさん飲むので、船の上では撮影の時間以外はほぼ寝ていました。古田さんは実際の漁師さんに色々と教えてもらっていました。何十年もこの船に乗っている感じを、短時間の練習で埋めなきゃいけないので、めちゃめちゃ練習されるんです。演技への取り組み方がすごかったです。