飲食店100軒以上のコロナ対策を点検したスタッフが証言「感染対策の決め手は」
再検査を伝えると料理長が怒鳴った
またアクリル板があるのに、テーブル席に設置していなかった中華店にも困ったそうです。
「そこはカウンター席とテーブル席3つの狭い店で、隣同士に座らないような対策を講じていましたが、対面では1メートル未満で、しかもアクリル板がなかった。そこで『再点検の可能性が大きい』と伝えると、キッチンにいた料理長が『対策には莫大なお金がかかった!』と怒鳴ってきました。
しかし、他店も感染対策に費用をかけていますから、私は一歩も引きませんでした。下ごしらえ中の料理長が包丁を持っていたので、ちょっと怖かったですけどね(笑)。その間、外に出ていた女将が、両手いっぱいにアクリル板を持って帰ってきたんです。アクリル板があるのに、使っていないんですよ。すぐその場で設置してもらい、厳重注意しました」
稲葉さんはとっさに「東京都のお墨付きの合格ステッカーをもらっても、間隔の対策を怠ったと客から通報されたら、ステッカーをはがされて再点検になります。お店にとって損ですよ」と強調。結果、帰り際に女将から感謝の言葉を述べられたそうです。
リーダーとしての資質がマイナスだった店も
そして点検の最大のテーマは「リーダーとしての資質が問われること」と稲葉さんは力説します。
「休業中であっても店内が整理整頓されて、トイレまで小ぎれいな店は感染対策もほぼ完ぺきでした。反面、マニュアル通りの感染対策を施していてもリーダーとしての資質がマイナスだった店主に合格点を出してしまった。今でも悔しいです」
それは埼玉県との県境で、JRと地下鉄の2つが通る、最寄り駅から徒歩15分ほどの居酒屋の店主だったそうです。
「他店の点検中に会社から『催促の電話があった』という連絡が入ったので、会社の了承を得て、大急ぎでタクシーで向かったところ、休業中の居酒屋内で店長が“アルバイト”の数人の男性らとマスクなしに酒を飲み、テレビの競馬中継を見ながら大声で騒いでいました」