ワクチン接種義務化で対立が進むアメリカ、「家族や友人間が分断」の背景
「自由=自己中」ではないのか?
米国でのワクチン接種状況について、Seiichiro Kita DDS歯科医院長・北誠一郎氏に聞いた。
「先日、自宅の近くでマスク反対のデモ隊がサインなど持って集まっていた。もうすぐ学校が始まるからだと思うが、親は子どもにまでサインを持たせて、みんなマスク着用せずに密になっていた。“Mask side effect = lower IQ(マスクの副作用=知能指数を下げる)” とか書いてあるサインもあった。アメリカ人はいつも自由を最優先することを誇りにして主張しているが、自由= 自己中だと思う。
(マスクを着けるか着けないかは)とにかく自分の自由だろと言う。結局は自己中で、自分の考えを人に押し付けようともするから、(ワクチン接種に関しても)対立が起きている感じがする。人に迷惑かけないようにする気持ちがないんだと思う。自分はワクチン接種しているけど、マスク着用して出かけている」
ワクチン接種者の7割は未接種者にイライラ
ロサンゼルス・タイムズ紙の2021年8月6日付け記事(英字記事)によると、「ワクチン接種者の10人に7人は、未接種者に対してイライラしている」という。特にカリフォルニア州やL.A.のようなワクチン接種済みの民主党支持者が多い州や都市で、このような傾向は顕著だという。
2021年6月中旬の世論調査「ギャラップ社」調べでは、89%の米国人は「コロナ禍の状況はよくなっている」と回答していた。しかし、1か月後の7月中旬の調べではデルタ株が原因のコロナ感染が再悪化したため、その数字は40%下がり、45%の米国人が「コロナ禍の状況は悪くなっている」と回答している。
医療の「カイザー社」調べでは、14%の米国人が「ワクチンを接種しない」と回答している。この数字は、成人のワクチン未接種者の半分にあたる。絶対にワクチンを接種したくない人は、圧倒的に白人(65%)で共和党支持者(10人中6人)だという。4分の3は50歳以下で若い世代が多いことも分かっている。ワクチン接種をしたくない人の理由の大半は、「FDAがどのワクチンも緊急のために使用を承認しているだけで正式に承認していないから」という。
だが、FDAがファイザー社のワクチンを2021年9月に正式承認することが決まっており、モデルナ社のワクチンもそのあとすぐに正式承認される予定だ。「カイザー社」調べでは、民主党支持者の86%、共和党支持者の54%が現在までのところ1回のワクチン接種を済ませている。