モノが売れない時代に、売れている商品の共通点。重要なのは「感情的価値」
マーケティングの4Pを知っているでしょうか。4Pは、マーケティングの基礎として知られており、Product(商品)、Price(価格)、Place(場所)、Promotion(宣伝)の頭文字を取ったもので、モノやサービスを売るためのフレークワークとして活用されてきました。
具体的には、どんな商品が売れるか、いくらなら買ってくれるか、どこで売るのが良いか、どんなキャンペーンが良いかといった視点で売り上げを最大化する施策です。業界最大級のビジネスセミナーポータルサイト「セミナーズ」を運営するラーニングエッジ株式会社代表の筆者(清水康一朗)がお伝えします。
売り手目線の売り方が通用しない時代
ただし、このアプローチはそろそろ限界を迎えます。というのも、安くて良いものがたくさんあり、物欲や所有欲が低下している時代では、4Pだけで消費者の「欲しい」「買いたい」という気持ちを掻き立てることが難しいからです。
マーケティング理論の多くは20世紀後半に構築されました。当時は、生産技術の発展と高度経済成長が追い風となり、車、家電、衣類などあらゆるモノが買われ、人々の暮らしが豊かになっていった時代です。いわば、作れば売れる時代であり、だからこそ、売り手目線のマーケティングが確立されたのです。
ところが、モノが十分に行き渡るようになると、日用品や消耗品以外は新たに買う必要性が低下しました。商品の質が向上して長持ちするようになり、買い換え需要が低下していますし、とくに昨今は社会全体の価値観として所有から利用に変わっています。
売り手や作り手からすると「良いものなのになぜ売れないのだろう」「この値段なら安いはずなのに」と思います。しかし、すでに良いモノや安いモノが溢れている市場では、売り手の思惑通りにはモノは売れないのです。
感情を満たせる商品がリピートされる
一方で、モノが売れなくなっている時代でも、売れるものは売れています。例えば、iPhoneは新機種が出るたびに売れますし、コロナで「おせち料理」や自宅用の食品通販は一気に伸びました。大型百貨店では、年末年始の帰省や海外旅行を諦めた人が、自宅で過ごすためのおせち料理を買いに走ったそうです。
このような商品に共通しているのは、機能や価格などのほかに感情的価値があるという点。消費者が、嬉しい、ありがたい、助かる、心地よい、などの感情を持てるということです。
感情が満たされることにより、消費者はその商品を買い続けたいと思います。満足したことをSNSでシェアし、より多くの人に共感されて「いいね」が付きます。サブスクリプション型の事業が注目されるようになったのも、会社とお客さまのつながり方が変わったことの表れと言えるでしょう。
これは売り手や作り手にとって大きな変化です。なぜなら、消費者に支持され、買ってもらうために、消費者の感情を満たすという新たな条件ができたからです。