「もっとも悲しい大会」東京五輪に招致で破れたスペイン、現地ライターが見た賛否両論の報道
新型コロナウイルスの感染の脅威にさらされながらも開催した東京オリンピックは、後半戦を迎えている。閉会式まで残り数日となった。平和の祭典を手放しで歓迎できない複雑な思いを抱えている人も多いことだろう。
「感動で、私たちはひとつになる」のモットーを掲げたこの大会。スペインのメディアからみるオリンピックの景色は、日本とはひと味違っていた。
東京五輪を「金継ぎ」に例えたスペイン国営局
東京オリンピックの開会式について、日本では「地味」「手抜き」と冷評の嵐だった。それに反し、スペイン国営局のコメンテーターは一貫して称賛していた。ドローンの描く地球が、東京の夜空に浮かんだとき「日本にしかできない演出だ」とコメントし、感動のため息をもらした。
なかでも印象的だったのは、東京オリンピックを「壊れたものを美しくつなぎ直す日本の工芸である『金継ぎ』」に例えていたことだ。壊れた世の中をひとつにつなぎ合わせ修復する、複雑な状況の中で開催した日本は、それができる国だとコメンテーターは語った。
開会式翌日のスペイン紙「エル・パイス」の記事には、「共存と未来への希望のメッセージが、控えめながらも洗練された開会式に詰められていた」とある。
「意外とよかった」と同紙のコラム欄で開会式について語った元バスケットボール選手でコラムニストのフアン・マヌエル・ロペス・イトゥリアガ氏。「開会式の立役者となったのは、『歴史、文化がちりばめられた演出』と『選手たちの満面の笑み』だった」と付け加えた。
スペインメディアのオリンピックへの反応は?
スペインオリンピック委員会会長のアレハンドロ・ブランコ氏は、「東京で大会が開かれていなかったら、スポーツ界は崩壊していた」とスペイン紙「エル・ムンド」のインタビューで言及している。
やるせない話だ。というのも、スペインのマドリードは、2020年のオリンピック候補地だったのだ。最終選考に残ったのは「東京」と「マドリード」「イスタンブール」。結果、東京が選ばれた。当初は、スペインも肩を落としていたようだが、今となっては胸をなで下ろしているだろう。
他にも、作曲家のパンチョ・ヴァローナ氏はスペイン紙「ディアリオ・アス」の記事で「もっとも悲しい大会」と開会式の感想を述べた。
スペイン紙「エル ディアリオ モンタニェス」の記者パブロ・M・ディエス氏は、「感染拡大を恐れ無観客の中、感動的な開会式で東京五輪が幕を開けた」と現地から知らせた。「日本経済のためには勝利のない大会だ」とスペイン紙「エル・パイス」は、東京オリンピックで日本の経済回復は見込めないと言葉を並べた。