視聴率は「個人」の時代へ。テレビ離れの意外な側面をビデオリサーチに聞いた
こちらが“オファーしている点”がポイント
これほど手間暇をかけ、厳正な管理の下で調査を続けている理由についても説明する。
「視聴率調査は手挙げ式ではなく、こちらから“オファーしている点”がポイントで、そこが我々の生命線ですね。バイアスのないデータという信頼が担保できなければ、TVCMなどのビジネスのための共通指標としては使えないものになってしまうので」(亀田氏)
次世代型メジャメント(測定)企業を掲げるビデオリサーチは、大規模生活者事業として大規模アンケート調査「ACR/ex」を実施。1人につき1000問以上という多岐にわたる質問で、メディア接触や生活意識、趣味・嗜好なども聞き取っている。
「そもそも視聴率データも生活者データの一部で、『ACR/ex』と核は一緒です。こう言ってはおこがましいのですが、あらゆるメディアの価値に対して正確なメジャメントを行うことが我々の使命で、それが結果的にメディアの価値の向上につながると考えています」(亀田氏)
テレビ離れの意外な側面とは?
メディア指標事業ではさまざまな媒体の物差しを構築し、その活用を提案。テレビ視聴率調査に代表されるマスコミ4媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)はもちろん、近年はデジタル媒体のデータ収集にも取り組む。
「リアルタイムとタイムシフトを合わせてカウントした総合視聴率という指標では、テレビ離れと言われる前の水準の数字を出す番組も少なくありません。また全国的な調査設計の統一を進めたことで、全国で何人の人に見られたのかという、推計人数の算出もしやすくなりました。視聴率だけでなく、推計視聴人数でも視聴の実態を示せるようになりました」(長谷川氏)
これまで以上にテレビのコンテンツとしての価値を示すことが可能に。いわゆるテレビ離れの意外な側面もわかってきたという。
「好きな時に好きなコンテンツを見る環境が浸透しただけで、結局、テレビのコンテンツ離れはしていないんですよね。若い人ほどそこはフラットで、『楽しいコンテンツであればいい』という感覚が強く、その意味では製作費をかけて、プロがつくったテレビコンテンツの強さもあるのかなと。局とコンテンツの結びつきが弱まり、フジ派、TBS派といった話が成立しにくい点はテレビ局にとってはツラいところですが。テレビ局側もコンテンツメーカーとしてクオリティで勝負する意識にシフトしていると感じますね」(亀田氏)
エンタメコンテンツの多様化が叫ばれる昨今、視聴率の調査方法が、もしかしたらテレビ局のコンテンツにも影響を与えているのかもしれない。
<取材・文/伊藤綾>