視聴率は「個人」の時代へ。テレビ離れの意外な側面をビデオリサーチに聞いた
YouTubeやネットフリックスが台頭し、動画コンテンツの楽しみ方が多様化する一方で、テレビ視聴率の低迷が指摘されるようになって久しい。とはいえ、Twitterのトレンドワードに視聴率関連の話題が入ることも多々あり、注目度を測る指標としてまだまだ現役だ。
テレビっ子にはお馴染みの“ビデオリサーチ調べ”。1962年に東京芝浦電気(現:東芝)・電通・民間放送18社の共同出資で設立されたビデオリサーチは、テレビ番組の視聴率調査を中心に様々な調査を行う企業。しかし、調査の具体的な中身についてはあまり知られていない。
そこで今回は株式会社ビデオリサーチのコーポレートコミュニケーション部長谷川晃子氏と亀田憲氏に、視聴率調査の内側や、データの活用法について聞いた。
対象は3年ごとに少しずつ入れ替えている
調査機器を設置する対象世帯はどのように決めているのか? この疑問に対し、長谷川氏はこう答える。
「調査世帯は国勢調査のデータなどを利用し、調査エリアの縮図になるような構成を意識したうえでランダムに抽出しています。やはり3世代世帯と1人暮らしではテレビの視聴傾向は違うので、年代や家族構成などもポイントです。最近はインターネットでの調査も増えていますが、視聴率調査はインターネットを利用していない世帯も対象に、手間をかけて対象世帯への依頼をしています」(長谷川氏)
ちなみに職場や寮、待合室などのチャンネルが固定されているテレビや不特定多数の人が見るテレビ、またマスコミ関係者のいる世帯は調査から除外されるそうだ。
「公平・公正を担保するため、調査の依頼時に必ず確認します。また、調査の仕様上、電気や通信を使うので、大きな額ではありませんが謝礼はお支払いしています。引越しする場合などを除き、基本は3年間のご協力をお願いしており、視聴データの傾向が急に変わらないよう、毎月少しずつ調査世帯を入れ替えています」(長谷川氏)
社内でも伏せられる調査機械の存在
視聴率といえば、ダウンタウンの松本人志氏が2021年6月、とあるネットニュースに対し、「ネットニュースっていつまで“世帯”視聴率を記事にするんやろう? その指標あんま関係ないねんけど」とSNSで発言したのが話題になった。
実際、視聴率は「世帯」から「個人」へと移り変わりつつある。そもそも個人視聴率の調査とは一体どういう仕掛けのものなのか?
「個人視聴率の調査方法は、専用の機械を設置させていただき、その上で個人測定用のリモコンをお渡しして、世帯の中の誰が視聴しているのかをテレビ試聴の際にボタンを押してもらうかたちです。お渡しするリモコン自体はひとつで、普通のリモコン操作よりもボタンを1回押す手間がありますが、慣れていただいているようです」(長谷川氏)
こうした調査機械を実際に見たことがある人は社員でも一部らしく、調査対象世帯の情報を扱っている部屋は、社長でさえ容易に立ち入ることできないという。