佐藤二朗が振り返る“20代の暗黒期”「リクルートを1日で辞めたのはアホだった」
振り返っても20代は暗黒
――そうした時代を「暗黒の20代」と話されていますが、振り返ってみれば、そうしたアップダウンも今につながっていると実感しますか?
佐藤:20代だからこそ、そんなアホみたいなことができたんでしょうね。リクルートを1日で辞めるのもアホだし、2つ養成所行ってダメなら、そこで劇団を旗揚げすればいいのに、またそこでサラリーマンをやって、そこで頑張ればいいのに芝居にまた戻るという。
20代でないとこんなにグジュグジュできません。普通だったら、会社に入ったらそこでやろうと思いますから。まあ今でも僕は「精神年齢6歳の52歳児」だと公言しているので、「20代のときは精神年齢何歳だ?」ってなりますけど。そういうバカみたいなやつだから、今の有難さもわかるし。
当時の何がよかったんだろ。でもやっぱり何もよくなかったな、やっぱり暗黒でしたよ(笑)。
「自分には才能がある」
――あっちに行ったりこっちに行ったりしながらも、やっぱり火が消えなかったのは。
佐藤:バカみたいに、自分に才能があると信じていたからですね。「絶対に大丈夫」と。まあ、才能ってなんだとも思いますが、でもやっぱり自分に才能がないとは思えなかった。俯瞰して、客観的に考えても。
それに27歳くらいで出会った鈴木裕美という今や日本を代表する舞台演出家がいて、普段はすごく厳しいのに、たまに「お前は役者としての才能は私の3000倍くらいはあるからな」と言ったり、「ちからわざ」の公演を見て「お前はもしかしたら書いてもいい人かもよ」って言ったりするんですよ。
そういう人がいてくれたから、余計に才能がないとは思えなかった。そうこうしていくうちに、堤幸彦さんと出会ったり、今の事務所に移ったりして前に進んでいった感じですかね。