経営危機のワタベウェディング、「キャベジン」の興和に身売りした理由
親会社との関係は良好とはいえず…
ワタベウェディングは2020年12月期に8億6300万円の債務超過となります。2019年12月期の自己資本比率は44.4%。テイクアンドギヴ・ニーズの2020年3月期の自己資本比率は40.6%でした。両者ともに近い水準でしたが、資本性のある資金調達が思うように進まなかったワタベウェディングは、財務が著しく毀損してしまうのです。
実はワタベウェディングは、通販カタログ「ベルメゾン」で有名な千趣会の持分法適用会社でした。2015年7月に両社は資本業務提携を締結し、千趣会がTOBで市場から株式を集めました。2020年12月末の時点でワタベウェディングの株式を34.0%保有していました。
これは、千趣会が引出物のカタログギフト需要が旺盛だったことに目をつけたものでした。ブライダルに商機を見出したのです。
今回の場合、大株主の千趣会がワタベウェディングの窮地を救うのが筋。しかし、千趣会とワタベウェディングの関係は決して良好なものではありませんでした。2018年10月にワタベウェディングはMBOを提案したと報じられました。MBOとは、経営陣が株主から株式を買い取ること。経営陣と株主の対立が鮮明になった際によく使われます。
翌年、MBOは実施しない方針を固めましたが、千趣会からの独立性を保とうとするほど両社の関係が悪化していたことが表面化しました。千趣会がワタベウェディングを見捨てた背景には、ブライダル業界に希望が持てなくなったことのほかに、良好な関係を築けなかったことがありました。
リゾート事業に期待をかける興和
20億円を出資して窮地を救ったのが興和です。興和は2020年3月期の売上高が4225億7600万円と資本力のある会社です。医薬事業で有名ですが、名古屋観光ホテルやナゴヤキャッスルなどのホテル事業も展開しています。ホテル事業の2020年3月期売上高は132億5300万円と、全体の3%程度に留まっています。
しかし、興和はハワイのホテルを買い取って全面改装し、2019年に高級ホテル「ESPACIO THE JEWEL OF WAIKIKI」としてオープンするなど、事業展開を積極化。有価証券報告書に記載された帳簿価格は78億3400万円。投資額が比較的大きく、リゾートは事業多角化の中でも期待をかけている分野のひとつだといえます。
ワタベウェディングは興和の完全子会社となり、再出発することとなりました。ワクチンの接種によって一部の国で経済は回復傾向にありますが、日本はまだまだ前途多難。復活への道のりは長く続きそうです。
<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>