所持金1万円で家出した20代女性も。急増する「若年ホームレス」の事情
親子喧嘩で家を飛び出し、所持金1万円でホームレスに
同じく、両親と喧嘩して家を出た若者のなかには女性もいる。佐藤玲奈さん(仮名・22歳)だ。
「原因が何だったかも覚えてないぐらい、何度も言い争いを繰り返していたので、昨年の11月に家を出ました。友達の家を転々とし、今年の1月3日からは、いとこの家に居候。ただ、所持金1万円で家を飛び出したので、とにかくお金がない……。日雇いで繋いでいましたが、お金が尽きて、居候も限界がきたので、2月から生活困窮者向けの格安シェアハウスのお世話になっています」
池袋から徒歩15分の立地で家賃は3万5000円。5つの二段ベッドが並ぶワンルームで、男女10人の共同生活を送っている。唯一のプライベート空間はベッドの上だが、現状に満足しているという。
「パパ活しながらホームレス生活を送っていた同世代もいたと知って、家を出たのに温かい布団で寝られる生活を送ってきた私は恵まれていたんじゃないかと感じました。4月からは老人ホームで介護士として働き始めています。お金が貯まったら一人暮らしも始められると思う。自宅? 母とは連絡を取っていますが、父がいる限り戻るつもりはありません」
若者ホームレスが抱える複雑な感情
このようにホームレスになった理由は三者三様だが、共通点はある。家族に対する複雑な感情だ。8万円も“家賃”を請求され、終いには家を追われたにもかかわらず、冒頭の高田さんは母親を恨んでいない。むしろ感謝さえしている。
「実は、いじめに遭って中学時代は不登校でした。社会人になってからの引きこもり生活を合わせると、4年近くも母は家にこもりきりの私を支えてくれたんです。それを考えると、無言のまま家を出た自分が恥ずかしい」
両親と絶縁した江口さんも、祖父母のことはたびたび思い出す。
「両親と絶縁しても祖父母だけは味方で居続けてくれた。高校卒業までは密かに援助もしてくれた。だから、連絡先は消してしまったけど、毎年、母の日と父の日には祖父母に匿名で花を贈っているんです。家庭を築くようなことがあったら、祖父母にだけは報告したい」
家族と若年ホームレスの間のこじれた関係を解きほぐすには、まだまだ時間がかかりそうだ。