有吉弘行「すれ違いを潰す」発言は芸能人だから?一般夫婦の本当の“離婚理由”とは
性格の不一致は何の説明にもならない
――なるほど。ところで司法統計によると、一般男性の離婚理由トップは「性格の不一致」(※)だそうです。
稲田:性格の不一致という理由は、曖昧すぎて何の説明にもなっていませんね(笑)。性格的なものが離婚の原因だとすれば、そこには大きく「内的要因」と「外的要因」があると考られます。内的要因は、その人が生まれ持った性格や人間性のこと。そもそも根本的に性格が合わない人と結婚に至るのは稀だと思うので、内的要因は少数派。一方、外的要因というのは、時間の経過によって変化する生活様式や環境のことです。
夫婦は最初、ともに寄り添って人生を並走しはじめますが、年月が経過すると、ふたりを取り巻く生活環境にさまざまな変化が生じます。転職や海外赴任、体調を崩して病気になった、親の介護、あるいは収入が減ってしまった。そういう、生活の大きな変化に対して、比較的たくましく臨機応変に対応できるのが女性、あまり対応できないのが男性です。
そうしたなか、夫婦にとってもっとも大きい生活環境の変化は、妻の出産ではないでしょうか。子どもが生まれてお母さんになった瞬間、性格が丸ごと書き換わる女性もいますよね。これは母性本能によるもので、変化しないと子供を育てられないからです。
――母は強しと言いますからね。
稲田:一方の男性は、子供が生まれても女性ほどは変わらない。つまり、変わらないマイペースな夫と、変わっていくリアリストの妻の間にギャップが生まれる。併走が乱れてくる。そして変化した妻についていけない夫が、「僕の妻は変わってしまった。昔はもっと大人しい性格だったのに……」となどと不満を持つ。妻は妻で、変わろうともしない夫に苛立つ。結果、夫婦喧嘩が絶えなくなる。
ただし、こうしたすれ違いは、夫婦間の歩み寄りや擦り合わせによって、ある程度は解決できます。ただ、その歩み寄りや擦り合わせに必要なのは、結局のところ「時間」。先ほど申し上げたように、経済的に裕福な夫婦のほうが、解決のための時間を捻出できるという点においては有利なのです。
※平成30年(2018年)度 司法統計の「婚姻関係事件数―申立ての動機別」
若い世代が結婚で失敗しないために
――今の若い人たちが結婚で失敗しないために、前もってできることがあれば教えてください。
稲田:相手の仕事ぶりに惚れて結婚を決断するのは、避けたほうが無難です。仕事内容なんてどんどん変わっていきますし、不本意で合わない仕事に就いてモチベーションが下がることだって、将来的にはいくらでもある。
営業職でバリバリやっていた人が、畑違いの事務職に異動することもあるでしょう。仕事で輝いてる姿なんて、いまこの瞬間だけかもしれないんですよ。いまこの瞬間の輝きだけを一生の伴侶として選ぶ根拠とするのは、あまりにも危険です。
仕事は人間のひとつの属性にすぎません。属性に惚れたということは、その属性が変化した瞬間、惚れた根拠が消えるということです。定年退職するまで勤め先が変わらない終身雇用制の時代ならまだしも、5年後10年後になんの仕事をしているかわからない今の世の中、仕事ぶりで相手を選ぶのは、男性が「若くてピチピチだから」という理由だけでその女性と結婚するのと同じくらい、愚かです。