「お前が言ったのか?」通報者が“脅迫”されるパワハラ防止法は欠陥だらけだ
ハラスメント通報者が脅迫されるケースも
――ほかにはどんなセカンドハラスメントがあるんですか?
村嵜:あとは、被害者が会社の相談窓口に電話したら説得された、というパターンですね。窓口の担当者から「そんなの全然ハラスメントにならないから我慢したほうがいい。相談したらややこしいことになるからやめときな」と言われたそうです。
――ほとんど脅迫ですね。
村嵜:ハラスメントの調査期間中に、行為者が被害者を特定して脅迫するような悪質なケースも実際にあります。
――本当に脅迫されることも……。そうなると被害者は安心して相談ができない。
村嵜:そのとおりです。被害者は、自身が特定されて不利益な扱いを受けることを恐れてしまう。だから国が「不利益取り扱い禁止証明書」を発行し、企業にその証明書の取得を義務付けるべきなんです。
パワハラ防止法を改正して「不利益取り扱い禁止証明書」取得の義務化を明記すれば、セカンドハラスメントの被害者を守れるようになると思います。
企業規模で異なるのは大きな問題
――パワハラ防止法における就活ハラスメント、セカンドハラスメントへの課題は理解できました。一方で、パワハラ防止法の施行によって改善されたこともあるんじゃないですか?
村嵜:もちろんです。日本ハラスメント協会では、企業のハラスメント相談窓口を請け負うこともあるのですが、パワハラ防止法施行前は、証拠があって明らかにパワハラ認定できるようなケースしか相談がありませんでした。
しかしパワハラ防止法施行後は、被害者側が「自分が受けているのがパワハラかどうか迷っている」というような場合でも、積極的に相談していただくようになりました。
例えば、従業員3000名規模の会社では、パワハラ防止法施行前は、ハラスメント相談窓口への相談件数が月に1、2件だけでした。ところが、パワハラ防止法施行後は月に5、6件の相談が来るようになっています。
――月の相談件数が約3倍に!! でも、パワハラ防止法の適用対象となっているのは、まだ大企業だけですよね。施行後の変化は大企業に限った話では?
村嵜:日本ハラスメント協会は中小企業のハラスメント相談窓口も請け負っているんですが、会社によっては相談が増えています。