「DV夫を殺して」“難役”に挑んだ、さとうほなみが”好きなこと”を続けていく理由
演じる役にあった音楽を聴く
――七恵とレイがYUIさんの「CHE.R.RY」を歌うシーンがあります。あそこはアドリブ的だったと聞いたのですが、歌う予定はなかったのですか?
さとう:「CHE.R.RY」を歌うことは決まっていたんです。ただ、私も希子ちゃんも、ラジオで流れてきたのを聴いて、「懐かしいね」とちょっと口ずさむ程度だと思ってたんです。それが、がっつり歌うということを直前に知って。最初の歌詞がすぐに出てこなかったのですが、撮影になったら、2人とも同じ個所から歌い出して。
学生時代の七恵とレイは、決して2人で一緒に聴いていたような間柄ではなかったと思うのですが、あの瞬間、同じ時代を過ごしてきたふたりの過去が見えた気がしました。
――事前に練習しなかったからこそ出た空気だったんですね。さとうさんはミュージシャンでもあるわけですが、歌の力をどう感じますか?
さとう:音楽の力は大きいと思います。昔、聴いていた曲を久しぶりに聴いたりすると、当時の情景や気持ちがパッと思い出されますよね。楽しかったことや、ツラかったことも。かと思うと、初めて聞いた曲でも、曲調や歌詞がすごく心にハマって入ってくることもある。私は、いろんな役を演じさせてもらうとき、その人が聴いていそうな音楽を聴くんです。
――そうなんですね。今回の七恵では何を聴きましたか?
さとう:今回の場合は、七恵が音楽を聴くタイプではないと思えたので、あまり聴かないようにしていました。ただ、すごく精神的にキツイと感じたときに唯一聴いたのは、Coccoさんの曲です。
音楽と俳優の二足の草鞋は必然
――さとうさんは音楽活動と俳優活動を両立しています。二足の草鞋は、選択として必然ですか?
さとう:芝居に関してはバンドをやる以前から、もともとやりたいと思っていました。バンドも、途中からはこれをずっとやっていきたいものになりました。どちらも楽しくやっています。自分らしく楽しく生きていくなかに、芝居も音楽もあるので、どちらを選ぶとか、どちらが上とか下とか、ツラいとかもないです。だから必然ですね。
――「bizSPA!フレッシュ」は若手ビジネスパーソンが読者なのですが、さとうさんの25歳というと、ちょうど「ゲスの極み乙女。」の「私以外私じゃないの」や「ロマンスがありあまる」などが発売された2015年頃かと思います。そのころは、さとうさんにとってどんな時期でしたか?
さとう:家族からは音楽でやっていけないようなら「25歳までに辞めてほしい」と言われていましたね。私は辞めるつもりはなかったんですけど、そういう気持ちもわかる。25歳前というのは、社会的なプレッシャーを感じる年代ではあったと思います。ただ私は、そのときにできることをがむしゃらにやっていただけでした。
――好きなことを続けていくための努力を続けていた時期でしょうか?
さとう:気持ちに揺らぎはありませんでしたが、大きかったのは、良い人たちに巡り合えたことだと思います。志が一緒の人たちに出会えた。バンドもそうですし、25歳以降にしても、今回の『彼女』もそうですが、出会えた人たちを「サイコー!」と言える。それってすごいことだと思います。