“ピザ御三家”で万年3位のピザハット。コロナ禍で生まれた「逆転の一手」
コロナ下の個食ニーズで「MY BOX」が好調
黒字化達成の要因として、グローバルの戦略に合わせる形でシンプルな事業運営を行ったことが成功に繋がったという。そんななかで生まれたのがおひとりさま専用のピザセット「MY BOX」だった。
コロナ禍で食シーンに変化が生じ、以前よりも個人で食事をする“個食”の需要が増えた。宅配ピザは夕食やホームパーティなどで注文する機会が多いなか、「MY BOX」はランチでも気軽に注文できるボリューム感が功を奏し、販売開始1か月で20万個を突破する売れ行きになっている。
「MY BOXはすでにグローバルで展開されていて、どの国も個食ニーズは伸びていた。ただ、中東地域のMY BOXはボリュームが多すぎて、台湾で展開しているMY BOXの量を参考に、日本でも展開できないか模索したんです。大人数向けのピザではなく、ひとりでも気軽にピザが食べられる。そんな、ちょうど良いサイズのピザセットを出せばヒットするのではと思い、2020年11月から一部店舗でテストしたところ、想像以上に反響があった。他社が同じような商品を出す前にいち早く展開しようと急いで仕込み、今年1月の販売にこぎつけました」
「宅配ピザならピザハット」という認知を
黒字化に伴ってライバルを迎え撃つ準備は整ったと言えるピザハット。生き残りをかけるために、どのような事業戦略を考えているのだろうか。最後に小田氏に今後の展望について語ってもらった。
「宅配ピザの利用者に実施したあるアンケート調査では、“ピザはどこも一緒”という声が多く、どのブランドも『美味しいピザ』という印象を持たれていることがわかったんです。そこで、肝になってくるのは『第一想起』の獲得。『宅配ピザを頼むならピザハット』と消費者に思ってもらうため、認知度アップを図るためのプロモーション戦略が重要だと考えています」
3月8日には、お笑い芸人のカズレーザーとフジテレビの子供番組『ひらけ! ポンキッキ』でお馴染みのキャラクターであるムックを、ブランドアンバサダーとして起用。
両者ともピザハットのコーポレートカラーである「赤」が代名詞で、「カズレーザーやムックがいるピザハットを第一想起してもらいたい」という狙いが込められているという。また、シェア拡大という観点では今後数年で店舗数も伸ばしていくそうだ。
「直近5年を目処に出店攻勢をかける計画を立てています。現在、店舗数も3位ですが、まずはピザーラさんの店舗数を抜けるように取り組んでいきたい。デジタルマーケティングの体制が整ってきたので、商圏単位で見ればシェア争いの勝算は十分にあると考えています。引き続きピザハットが多くの人に愛されるブランドになれるよう、尽力していきたいです」
“いつだって想像以上。”をブランドスローガンに掲げるピザハット。昨年には世界で唯一、日本独自の「トマトソース」や「チーズ」をピザに使うことが認められ、グローバルでも日本市場に注目が高まっているが、どこまでシェアを伸ばすことができるのだろうか。
<取材・文・撮影/古田島大介>