三菱UFJ銀行「新卒年収1000万円」報道を見て、私が「遅い」と感じたワケ/常見陽平
年収1000万円も“ありうる”が正解
経営難の大手企業で、銀行の人間が送り込まれ、経営陣になるのも一例だ。たとえば、アサヒビールは中興の祖と呼ばれた樋口廣太郎氏をはじめ、住友銀行(現:三井住友銀行)出身者が大活躍して、再建の立役者となった。
誤解なきように言うが、筆者個人としては「銀行へ入ったほうがいい」とおすすめするわけではない。どの会社も大きく化けるのか転ぶのかは、未知数であるからだ。
三菱UFJ銀行の新たな給与体系の導入は、あくまでも年収1000万円も“ありうる”という見方が正しい。外資系金融機関やIT企業に対して違いを作り出したというよりは、ようやく並んだ、あるいは精一杯のことをやったということだ。
今後、金融機関はさらなる統廃合が行われる可能性がないわけではない。三菱UFJ銀行の取り組みが一石を投じるものになるのか、何が変わるのかはいずれ問われることだ。そして、働く意味は給与だけとは限らない。銀行は、日本社会を支えているのを体感できる職場でもある。
あらゆる業界が過渡期を迎えつつあるなか、今回取り上げたニュースは、国内の企業で働くあり方を考える教材にもなった。
<TEXT/千葉商科大学国際教養学部准教授 常見陽平>