光宗薫、活動休止からボールペン画家に「万年床で1日15時間描いた」
170年以上前の小説を題材に
――今回の個展の題材になっている「メロンタ・タウタ」ですが、今から170年以上も前の1849年に発表されたエドガー・アラン・ポー氏の冒険小説だそうですね。
光宗:そうです。この「メロンタ・タウタ」という小説は、軽気球に乗る主人公が誰でもない誰かに向けて手紙を書き続けるという、ちょっと風変わりな物語です。
世間に対する主人公の憤りや不満がつづられていますが、その思いを誰かに直接伝えることもなく、主人公自身、伝えることに対する希望すら持っていないような書き出しから始まります。だけど最後の数行で本当はどこかの誰でもいいから、自分の話を聞いて欲しいという願望があるように感じました。
なんだかとても矛盾しているんですけど、この無力な主人公が抱えるやるせなさに共感を覚えたと同時に、私が絵を描く時の心情に通底するものがあるように感じて。これは作品に重ね合せることができると思いました。
巨大なUMAをモチーフにした作品も
――なるほど。小説以外からもインスピレーションを得ることはありましたか。
光宗:実はもうひとつ隠されたテーマが(笑)。それは私の大好きなUMA(未確認生物)たちです。今回の個展で一番大きな絵として描いた「オゴポゴ」というタイトルの作品は、オゴポゴという蛇に似た水棲型の巨大UMAをモデルにしています。
他にも蛾人間モスマンや刑天(けいてん)を描きました。中国神話に登場する巨人・刑天はユニークな説話が残されていて、戦闘中に首を切断されても戦いをやめず、自分の乳首を切り落として目に、腹部を斬って口にして、首なしのまま戦い続けたとか。
――さすがUMA好きなだけあって詳しいですね。
光宗:そうですね、いつから好きだったかははっきりと覚えていないのですが、昔から好きでした。UMAとは直接的に関係ないかもしれませんが、「キャトルミューティレーション」という家畜がUFOに誘拐され、体の一部を切り取られたり、血液が抜かれるという有名な都市伝説を題材にした絵も描いています。