ミャンマー軍事クーデターで「米中対立」は悪化するか。日系企業にも影響
2021年2月1日、ミャンマーの与党・国民民主連盟(NLD)の報道官が、国軍によるクーデターが発生し、アウン・サン・スー・チー外相やウィン・ミン大統領など政府高官やNLDの幹部らが拘束されたと発表した。
なぜクーデターが起こったのか
このクーデターには、2020年11月に実施された総選挙の結果が大きく影響している。NLDが全476議席のうち396議席を獲得し、国軍系の最大野党である連邦団結発展党(USDP)は33議席に留まり惨敗した。
国軍は選挙で不正があったとし、政府・与党に対して再選挙を要求するとともに、2月1日に召集される予定だった国会のボイコットを示唆していたが、クーデターによって権力を掌握してしまった。
諸外国からは非難の声が高まっている。アメリカのジェン・サキ大統領報道官は、アウン・サン・スー・チー外相やウィン・ミン大統領の即時解放を求め、「解放されなければ責任者に対して然るべき行動を取る」と対抗措置を発動する可能性も高い。今回のクーデターは民主制度への移行を台無しにするものであり、米国はミャンマー国民の味方であると主張した。
また、オーストラリアのマリース・ペイン外相も米国同様の懸念を示し、法の遵守と捕まった政府高官らの即時解放を訴えた。バイデン政権は同盟国との関係を重視しており、今後こういった問題に対して欧米諸国からの圧力が強まることが予想される。
ミャンマーで米中対立の構図
中国は、ミャンマーは中国にとって友好国であり、憲法に基づいて政治と社会の安定を守るように希望するとして、クーデターについて静観する立場を取った。
ミャンマーは中国が主導する「一帯一路構想」により、長年多額の資金援助を受けており、中国にとってもインド洋進出を目指すべくミャンマーは戦略的要衝である。
人権や民主主義を重視するバイデン政権はミャンマーへ経済制裁ををほのめかしているが、仮にそうなれば、中国とミャンマーの外交関係がさらに緊密化する可能性がある。ここにも米中対立の構図が見られるのだ。