米大統領選の陰謀論、ハマる理由は「優越感」。ダースレイダーが解説
「答え」を知ることの優越感によりハマっていく
人類史をたどると、もともと人間が狩猟採集をしていた頃は、自然現象とかも含めて、起こったものにその場で対処していくという考え方で済んでいました。しかし定住社会を築くようになってからは、穀物を貯蓄する、財産ができる、そしてそれを守るための法律ができていきます。そういった近代社会が作られていく過程で、「じつはこういうことになっています」みたいな嘘をみんなが信じるようになります。
例えば国家や神、貨幣がその例です。「このお札には価値がある」とみんなが信じることによって、貨幣が流通することが可能になっています。大きな企業というものが実在するとみんなが思うことで、企業が企業活動をできるようになっていく。国家というものが存在すると思い込むことで、実際に国家というものが社会運営をしていくことができるようになっていく。そういったものを信じるという人間の能力のおかげで、すごく大型な定住社会を営むことができるようになった。これは人類史などの研究でもよく指摘されています。
つまり、人間社会というものは虚構で作りものです。これに対して「なんでこんな紙切れに価値があるんだ」「なんであそこの社長は権力を持ってるんだ」など違和感を覚えることは、僕は感性として正しいと思います。
ただし、それに対して「答えはこれです」と用意されることを、僕は“ジャンプポイント”と僕は呼んでいて、これは陰謀論にハマってしまう表現としては適切だと思っています。途中までは合理的な考え方ができていたのに「正解がこれなんです」と与えられたときにジャンプしてしまう。そしてその正解が世間で知られていない、メディアが報じていないなど特殊性を持っているものであるがゆえに、それを知りえた自分はある種の特別な存在だと考えたり、優越感へと繋がっていきます。
陰謀論にハマらないための“前提”
僕はそもそも、自然現象などを含め世界で起こるさまざまな出来事に正解はないと考えているんです。
「何事にも正解がある」「すべては繋がっている」という“物語”として因果関係があって、起承転結の中ですべての出来事が語られる。その考え方も、人間が社会を営む上で必要な、嘘を信じる能力だと思います。
物語にするっていうのも人間の能力です。ですが、これはたかが“人間の”能力。世界ではそんなものは関係なく台風は巻き起こるし、地震は起きるし、火山は噴火する。宇宙は拡大し、太陽も冷えていき、地球もそのうちなくなってしまうと。そういった現実は誰かが仕組んだとか、組織とか関係なく行われています。
でも人間はそれには耐えられず、不安になってしまって「物語ではこういうことなんじゃないか」「これとこれは関係あるんじゃないか」というふうに見てしまう。陰謀論的物語構造の特徴としては一部には事実があるが、それを繋げるために「〜だから、〜になった」という説明を用意してしまいます。
実は、こういう考え方を自分たちがしてしまうんだということを理解することが、陰謀論的なものにハマらない前提となってくると思います。よく直感的な違和感を抱いたときに「直感こそが正しいんだ」「論理でああだこうだ言われても自分の直感が正しいんだ」という人がいます。しかし直感というのは、赤ん坊のころは別として、生育関係や文化に依存します。