「震災を機に気仙沼に移住」数億円の世界から離れて女性デザイナーが見つけた幸せ
新型コロナウイルスの影響によるテレワーク、在宅勤務の拡大を受けて、地方移住に目を向ける人が増えている。現役リクルート社員の森成人さんは、2013年より東日本大震災の被災地である宮城県気仙沼市で生活し、1405日間(およそ3年10か月)の仮設住宅暮らしをブログ「気仙沼出向生活」で綴っている。
本連載「リクルートから被災地へ」では森さんが被災地の生活を通じて知り合った、ローカルで活躍する若者などを紹介する。今回、取材したのは、鈴木歩さん(40歳)だ(以下、森さん寄稿)。
気仙沼にオシャレなデザインのクラフトビール
気仙沼に訪れてからしばらくたって、最近、夜にお酒を飲むときにおススメをされるものがある。それが2020年に誕生した気仙沼のクラフトビールだ。
発売から1年で、すでに約30種類にも及び、売れ行きも好調だという。このオシャレなデザインのパッケージを見ながらいつもどれを飲もうか悩むのだが、今回お話を聞かせてもらったデザイナーの鈴木さんこそ、このパッケージデザインを製作者だ。
「私もお酒は好きで、当時は正直クラフトビールはあまり詳しくなかったのですが知れば知るほどクラフトビールの魅力、その背景、仲間、クラフトビールを軸としたコミュニティづくりというキーワードがとても心に残りました。一緒にそれらの思いを発信していきたい。そう思い、その勢いでデザインをビール会社にプレゼンをしました(笑)」
鈴木さんは他にも、地元水産加工商品のパッケージや気仙沼のお祭りのポスター、さらには気仙沼移住・定住支援センターのロゴなど地元の重要な取り組みの多くのデザイン製作を行っている。
デザインの価値を認めてもらえない?
思えば、私が気仙沼に住み始めた7年前(2013年)と比べて、街にオシャレなデザインのポスターや看板などがずいぶん増えてきたように感じる。気仙沼というローカルに住み始めた当初思ったこと、それは都会と比べてローカルではデザインの重要性を理解してもらいづらいということだった。
リクルートでの私は、お客様である企業や個人がこれから取り組みたい施策をだれに向けてどんな方法で実現するか、デザインを通して組み立てていくことを仕事にしていた。それはそれまで自分にとって当たり前なことだったが、いざ気仙沼でも復興事業で同じように行おうとしてもデザインの重要性はもちろん、近くにそれを協働できるクリエイターの存在がそもそもおらず苦労したことを覚えている。そんな中で知り合ったのが鈴木さんだった。