不動産で騙されないための心構えは? 業界のプロが語り合う/夏原武×全宅ツイ
早いもので2020年もまもなく終わる。東京オリンピック延期や新型コロナウイルス感染症が猛威を振うなど記憶に残る1年だったが、そんななか年間で最も話題になった不動産・事件を決定する「クソ物件オブザイヤー」が、例年通り開催された。
2020年で7回目となる本イベントだが、その最優秀作品の発表日である12月18日を前に、イベント主催者である全宅ツイの主要メンバー(全宅ツイのグル、あくのふどうさん、どエンド君、はとようすけ、かずお君)にインタビューを敢行。しかもゲストに不動産業界の暗部を描いた人気漫画『正直不動産』の原案・夏原武氏を招待。
世の中の酸いも甘いも噛み分けた猛者6人に、前回は今年の不動産業界を振り返りつつ、漫画づくりの裏話を聞いた。後編では悪徳業者に騙されないためのテクニックなどを語り尽くしてもらった。
不動産で騙されないための心構えは?
――不動産に限らずさまざまな騙しが世の中にあると思います。特に若いビジネスマンはいいカモだと思いますが、引っかからないためにはどうすればよいでしょう。
夏原武(以下、夏原):不動産投資はもちろんちゃんとしたものもあるけど、「フラット35」(全国300以上の金融機関が住宅金融支援機構と提携して扱う長期固定金利住宅ローンの総称)を悪用して、「年収300万円もあれば十分、自分で住まなくても、投資用のマンション運営ができる」とか言うのはよくないね。
自分の経済状況をきちんと理解して、「どうして安い賃貸アパートに住んでいて、年収300万円もいかない自分が、投資用物件を持てるのか」と冷静に考えたらわかるよね。当然営業マンの口が上手いとかあるんだろうけど。
かずお君(以下、かずお):みんな人生を一発逆転したいんですよ。
どエンド君(以下、どエンド):でも年収300万円もいかない自分と同じ立場の人が、投資して上手くいくんだったら、誰だって全員が儲かっちゃう話なんだけどね。
夏原:そう、みんなが勝ち組になるっていうのはあり得ない。負ける人がいるから、勝つ人がいる。
――不動産業界の皆さんが、20代の若者に資産形成のアドバイスをするとしたら?
全宅ツイのグル(以下、グル):それは自宅を買うことですね。若者は、自分が住みたいと思うところを買えばいいのに。
かずお:僕も、今働いている会社の後輩に「属性」「与信」「給料」がちゃんとあるのに、「なんで家買わないの? 賃貸住まいは、お金を捨てているのと一緒だよ」と言うけど、「なんか怖い」と。3000万~4000万円の借金をするイメージが沸かないんでしょうね。
あくのふどうさん(以下、あくの):若者からすると高いよね、総額が。
グル:でも素人に低金利で貸してくれるなんてのは、住宅ローン以外にないんですけどね。
若者は「投資用」ではなく「自宅」を買え!
はとようすけ(以下、ようすけ):今、金利0.5%ですからね。
かずお:そうそう。0.5%で35年貸してくれるローンなんて他にないよ。「金借りられるのも能力のうち」というのが理解されていない。はじめないと時間がもったいない。「償還性」があるものだから、1秒でも早く始めたほうがいい。僕ももっと早く家買えば良かったって思うものね。
夏原:それって、一面の真理だよね。
かずお:「損したら怖い」「何千万も借金なんて」と思うかもしれないけどさ、住んでる家がいきなり半額になると思う? 浪費での借金と違って、3000万の借金と同時に3000万の家も手に入れてるわけだから何も変わってないというのに。
グル:B/S(貸借対照表)的な見方ができないんですよね。とりあえず、20代なんて失うものがないんだから何で攻めないんだろう。
かずお:1回買ってみたら「ああ、こんなもんか」ってなりますよ。
どエンド:自宅なら買って少し失敗したとしても、自分で住み続ければいい。逆に「儲かります!」って煽られて収益目的で買う不動産には気をつけたほうがいい。お金がなくて住宅ローンしか借りられないような人のところに、まともな収益物件がくるはずがないから……。住みたい自宅を探して、自分がこれくらいなら払って借りたいなっていう家賃より毎月のローン返済額が低ければ、まぁ大丈夫だと思う。