人気アナウンサーが明かす「人生最大の失敗」。東日本大震災の中継で
最大の失敗は「東日本大震災の中継」
――著書にはいろんな失敗談が紹介されていますが、いままでで一番失敗した出来事はなんですか?
唐橋:東日本大震災の時の中継ですかね。今でも夢に見るくらい、思い出すだけでもゾクッとしちゃうんですけども。『サンデーモーニング』で、福島の浪江町から防護服を着て中継したときに、私が福島出身なので関口さんから「一言」と振られたんです。
一言と言われているのに、湧き上がる感情の勢いでバーっと言っちゃったんですよ。時間がきて途中でバサっと切れちゃって、当然スタッフには「お前何やってんだよ!」って言われました。
気がついたら口の中カラカラで、涙も出なくて言葉も出なくて。福島でアナウンサーをやってきて、東京に出てきて……私何をやってるんだろうと帰りのバスの中で呆然でした。同郷の人たちに、自分の思いをちゃんと伝えられなかった。自分の感情一言で表せれなかった。プロとして失格ですよね。
視聴者からのお手紙に「助けられた」
唐橋:いろんな感情があって立ち直れない日々が続いたんですが、助けられたのが視聴者の方からいただいたお手紙。「あの時、一言で表せなかった唐橋さんの感情がすごくわかります。怒り、切なさ、もどかしさ……伝わりましたよ」というお手紙を読んで、すごく救われました。心の底から感謝の気持ちがありますね
――その経験を機に、仕事の取り組み方で変わったことはありますか?
唐橋:毎日の日記の書き方が変わったかもしれないですね。だらだら書いていたのを簡潔にまとめるようにしたり、もし今「15秒で」とコメントを振られたらとすぐに答えられるようにシミュレーションしたり。もっと早くからやれよって感じなんですけどね(笑)。
実際に失敗を経験すると、慎重になります。アナウンサーなりたての頃に、それ以上の失敗はしていると思うんですけど、全部塗り替えるくらいの大きな失敗でした。でも、次につながる失敗は何十回、何百回でもいいんじゃないかなとも思います。ちゃんと次につなげていければ。
<取材・文/ツマミ具依 撮影/山川修一>
【唐橋 ユミ】
フリーキャスター。福島県生まれ。テレビユー福島を退社後、東京を拠点に、フリーキャスターとしてテレビ・ラジオ・CMなど幅広く活躍。『サンデーモーニング』(TBS系)『新Shock感』(テレビ東京系)などに出演。著書に『会話は共感力が9割』(徳間書店)など