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「東京証券取引所」はどんな会社?社長が引責辞任したシステム障害も

ビジネス

業績:利益も安定的に出ていて堅調な推移

日本取引所グループ

図:日本取引所グループ(JPX)の業績推移(決算短信より筆者作成)

 続いて、JPXの業績推移をまとめてみました。営業収益は上昇傾向にあり、利益も安定的に出ていることがわかります。

日本取引所グループ

図:2019年3月期(2018年度)→2020年3月期(2019年度)の営業費用についての内訳(決算説明資料 より引用)

 また、決算資料を見ると、システム整備関連の記述量が多いことがわかります。バックアップセンターの整備や、arrowhead(arrownetに接続する現物商品売買システム)リニューアルなど、「時間と工数がかかるが重要」な施策について重点的に対応していることもうかがえました。したがって、従前よりJPX内ではシステムへの投資は「重要な課題」として捉えられていると判断できます。

グループ平均年間給与は1,017万円(平均43.4歳)

東証

東京証券取引所(東京都中央区)

 では、現場の雰囲気や働きやすさはどのようになっているのでしょうか。今回は有価証券報告書・公式サイトの情報・ニュースなどからその姿に迫っていければと思います。まず、給与水準については有価証券報告書を確認しました。日本取引所グループの平均年間給与は1,017万円と、非常に高い水準でした

 ただし、「報告会社=日本取引所グループ(JPX):223人」「連結会社(東証なども含む):1208人」となっており、平均年間給与が公開されているのが「日本取引所グループ(JPX)」の223名(平均年齢43.4歳)を対象とした値になっています。そのため、東証も含めた全体を代表した値ではない点にご留意ください。

 また、労働関連を中心に、大きな不祥事がないか調べてみました。労働問題については特に見つかりませんでしたが、主なものとして、「みずほ証券との間で起きたジェイコム株大量誤発注事件」と「清田CEOの内規違反(上場インフラファンドの取引)」を取り上げます。

 まず、前者については2005年12月8日にマザーズに上場した「ジェイコム社(現:ライク社)」株について、みずほ証券の担当者が「61万円1株売り」とすべき注文を「1円61万株売り」と誤ってコンピュータに入力して発注したことが発端となっています。本件は最終的にみずほ証券・東証間の訴訟に発展し、東証側に107億円の支払いを命じる形で2015年に決着がつきました。しかし、事件発生当時はみずほ証券のみに金融庁より業務改善命令が出ています。また、金融庁はほかの証券会社にも同様の調査をしており、金融庁としては「東証に落ち度がある」と判定していない点には留意が必要です。

 そして、後者の清田CEOの内規違反というのは、具体的には「取引所の役員」という性質上、個別株やそれに違い性質の金融商品を購入できないというJPXの「内部ルール」に違反したということを指しています。法律には違反はしていないものの、気になる案件です。また、清田氏は今回のシステム障害で引責辞任となった宮原氏(元東証社長)の後任 でもあるので、今後の動向はしっかり見守る必要があると言えるでしょう。

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