「自分が本当にやりたいことがわからない」そんな悩みへの回答
本当の自分はどこに存在しているのか?
さらに彼は、この思想を物と人間を比較して説明しています。例えば物であるハサミは、何か切るものが必要(本質)だから切れるもの(実存)を作ろうとして生まれたものである。一方で私たち人間は、あらかじめ存在する理由(本質)が設けられて生まれたもの(実存)ではない、生まれてから本質を決めていくものであると考えました。
そのため人間である私たちが、自分の本当の在り方や生き方というものを社会や他人に対して任せているというのは、この自由と表裏一体の責任から逃れようとしている現れでもあり、それは本来的な人間の存在理由から正しいとは言えない、とサルトルは考えたのです。
つまり、今回の「本当の自分が分からない」という悩みに関しては、まずは本当の自分というものは本来的にそもそも存在しているものではないことを理解し、そしてそれは誰かに与えられるものでも偶然に出会うのではなく、自分で見出して決めることができるものなのだ、というメッセージを受け取ることができます。
少し厳しい気もする一方で、非常に希望にも溢れた言葉です。
<TEXT/DECODE 哲学書専門の本屋>