プロポーズする計画が、腹痛と吐き気で限界に。彼女を残して去った結果…
ホテルから救急車で病院に
夜が更けるに従って腹痛だけでなく吐き気も酷くなり、浩介さんは水すら嘔吐するほど症状が悪化していました。市販薬も効かず、命の危機を感じたところで「救急車呼んで!」と雪美さんに頼んだといいます。
「高級ホテルって、他の客への気遣いからか、裏口に救急車を止めるみたいなんです。ホテルの従業員の方がストレッチャーで部屋から運び出してくれて、私は見たこともない通用口のようなところを通り、救急車へ乗せられました。彼女も付き添いとして乗り込みました。近くの病院へと搬送され点滴に繋がれると、嘘みたいに楽になりましたね」
全ての輸液が体内へ収まると立って歩けるほどに回復していました。医師が言うには食あたりの症状とのことで、恐らく前日に食べた生ガキ(ノロウイルス)が原因でした。処置室を出て、すぐ暗い廊下にある長椅子に座る雪美さんを見つけ、そのまま2人はタクシーでホテルへと向かいました。
翌朝目を覚ますと、そこには…
「ホテルに戻ると部屋にはルームサービスのテーブルがセッティングされ、花束とケーキが静かに並んでいました。レストランで誕生日を、ホテルでプロポーズをと考えていたので、ケーキは2つ用意していたんです」
「せっかくだから食べて」と、ベッドへ倒れ込むや否や、浩介さんは眠りに落ちたそうです。翌朝、すっかり回復して目を覚ますと、部屋に雪美さんの姿はなく、クリームが溶けフルーツが干からびたケーキと、萎びた花束だけが残されていました。
特別な1日はカップルを盛り上げますが、別の意味で特別すぎるプロポーズ未遂の大惨事になってしまいました。今では浩介さんは幸せに過ごせているようですが、彼女はどのような気持ちで彼のもとを去っていったのでしょうか……。
<TEXT/七里美波 イラスト/田山佳澄>