老舗出版社で若手4人が続々休職「テレワーク後の出社がツラくて…」
世間と会社のギャップにやられて…
「うちの職場では『コロナなんて知ったことか』という『体育会系』のノリがまかり通っていました。緊急事態宣言が明けるや否や、飲みに繰り出す社員も多かった。世間と会社の空気のギャップも大きさに、渡辺君は戸惑ったのかもしれませんね」
3人目、4人目の休職者が出たのはそれから1か月後のことだった。入社2年目の社員と、もう1人の新入社員が相次いで会社に来なくなった。
「休んでいる社員の担当を振り分けましたが、当然、手は足りません。部長は『体調を崩す人が相次いでいて』と繰り返していましたが、ここまで社員が連続して休職に入ったのは異常事態です」
とはいえ、今年は「コロナ鬱だったから」と言っておけば、休職の理由も説明できてしまう。会社はその原因を、「組織の問題」としてではなく。「去っていた側」に求めがちだったかもしれない。
「噂好きの社員が多い」ことも一因か
「うちの場合、『噂好きの社員が多い』ことが陰湿な空気を作っていたのかもしれません。“お局的な社員”が部長や役員と仲が良く、ちょっとした噂もすぐに回る。社員のSNSをこっそり特定し、酒の肴にすることも日常茶飯事でした。親の話やプライベートの話に突っ込んだ質問をされるのも、不快だったのかもしれません」
昭和生まれの社員からすれば、すべて「愛のあるいじり」だったのかもしれない。しかしそれは、「令和世代」にとっては苦痛でしかないのだ。
コロナ禍に起きた「異常事態」。それが意味するのは、時代に取り残されて変われない会社の実態だった。佐藤さんにとって、はじめに休職にはいった高崎さんは最も信頼のおける後輩だったという。高崎さんが会社に来なくなってから半年、佐藤さんの送ったLINEに既読はつかない。
<取材・文/西野健>
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