上京前はマネージャ業も。女優・奈緒がお芝居に挑戦した「20歳の決意」
2019年の連続ドラマ『あなたの番です』(日本テレビ)での怪演で一気に注目を浴び、前クールの『竜の道 二つの顔の復讐者』(関西テレビ)でも印象を残した女優の奈緒さん(25)。
現在、髙田郁さんのベストセラー小説を、製作者のみならず映画監督として活躍した角川春樹が“生涯最後”の監督作としてメガホンを取り映画化した『みをつくし料理帖』が公開中です。
料理人としての人生を、江戸で切り開いていくヒロインの澪を松本穂香さんが演じる本作。澪の幼馴染で、吉原で頂点を極めたあさひ太夫・野江を演じた奈緒さんに、撮影についてだけでなく、上京以前に体験したマネージャー業などを聞きました。
感じたのは寂しさだった
――太夫役は女優さんにとってひとつの憧れかと思います。オファーを受けたときは?
奈緒:太夫は大スターだと思いながら、これまでいろんな作品を観てきましたし、自分に来る役だとは思っていませんでした。「まさか!」という気持ちで、喜びと同時に、「自分で大丈夫だろうか」と焦りとプレッシャーが押し寄せてきました。
ただ、実際に所作指導に入り、また台本を何度も読んでいくなかで、幻の太夫とよばれるあさひ太夫は周りからそう作られた存在でもあるのだと思うようになり、松本さんや中村獅童さんと一緒にお芝居をしていくなかで、素直に反応していけば大丈夫なんじゃないかと思うようになりました。
――実際にあさひ太夫として現場に入ってみていかがでしたか?
奈緒:憧れだった太夫のお着物を着せていただいて、ため息が出るほどに豪華絢爛なお部屋に通していただいて座ったときに、思いのほか寂しい気持ちになりました。
最初は「華やかな憧れの太夫をやれる!」と思っていたんですけど、実際に入ってみると、「こんなにきれいな景色で、窓のあるいい部屋で、こんなにキレイな着物を着ているのに、あさひ太夫は一人きりでいるのだな」と感じて。光が強いからこそ、影の濃さを感じる瞬間でした。
自分が出ない現場に出没することも
――角川春樹監督というレジェンドの現場は、どんな雰囲気でしたか?
奈緒:いい意味での緊張感がずっとありましたし、監督ももちろんそうですが、技術部のスタッフさんとのコミュニケーションがすごく多い現場でした。私自身の撮影日数はそれほどなかったのですが、そのなかでもすごく育てられている実感がありました。
角川監督は、厳しいときもありながら、この映画のことをとても愛しているのだと伝わる瞬間が毎日ありました。モニターを見るお顔もとても嬉しそうで、愛おしそうで。自分の撮影がないときには、横でモニターを一緒に見させていただきながら、私がお芝居しているときにもこんなお顔で見て下さっているのだなと感じて、とても幸せでした。
――ご自身の撮影がないときに、モニターで見ていたというのは、ほかの現場でも同じですか?
奈緒:現場が好きなので。撮影がない日にも、邪魔にならない程度で来ていることが結構あります。たまにですが、自分が出ていない作品でも、仲のいいスタッフさんがいたりすると、「ちょっと観に行きたいんですけど」とお願いして、エキストラで参加したり。
――ええ! 本当に?
奈緒:はい(笑)。こっそり参加しているときもあります。もちろん事務所には伝えて、現場の空気を感じに行きます。自分の出番があるときには、次のシーンのことを考えて、全体を見る余裕がないんです。一方で、何も出番がないときだと、撮影現場全体を見られますし、純粋に現場を学べますから。