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ビル・ゲイツが瞑想を始めた一冊。体験者に起きた驚きの変化

ビジネス

心の働きはコントロールできない

 よく眠れないのはきわめてよくあることだと安心させた後、私はレイチェルに基本的な瞑想のアプローチについて説明し、毎日10分間の瞑想をしてもらうことにしました。夜のことが問題なのに、瞑想を朝するよう言われて、彼女は少し妙に思ったようですが、心の働きは必ずしも彼女の思うようなものではなく、毎日きちんと続けることが重要なのだと私は説明しました。

 さらに、「睡眠衛生」についても見直すように言いました。これは眠るための準備のしかたです。まず、寝室を眠ることだけに使うように言いました(もちろん恋人との時間を除いてですが)。これにより、ベッドに入ることイコール眠ることという連想が強化されます。また昼寝はしないように伝え、睡眠時間をきちんと決めて、毎日同じ時間にベッドに入り、同じ時間に起きることの大切さを説きました。

 これは週末でも当然そうです。厳しいと思うかもしれませんが、心と体に新しい習慣を覚えさせるには何度も繰り返さなければなりません。また、夜遅くに刺激的なテレビ番組を見たり、コンピュータ・ゲームをするのは避けるように言いました。どちらも心を落ち着かなくさせるからです。

さらに食事についても、食べ物がすべて消化されるよう、ベッドに入る2時間前には食事をすませるように言いました。最後に、昔ながらの目覚まし時計を買うことの重要性について話しました。そうすれば、携帯電話は夜のあいだ別の部屋においておけるので、夜中にメールをチェックしようという気にはなりません。

「今、ここ」を意識するエクササイズ

瞑想

 最初の1週間、レイチェルは何日も続けてよく眠れたといって、とても興奮していました。けれども2週目に入ると、進歩の遅さにいらだつようになりました。そこで、もう一度アプローチについて話しあい、最高の結果を出すために必要な姿勢について説明したところ、3週目にはたしかな進歩があらわれはじめました。

 それから2か月ほど面談を続けて、徐々に様々なテクニックを取り入れていき、最後に眠りながら「今、ここ」を意識するエクササイズにたどりつきました。ときどきは寝つけないことがあっても、彼女は全般的に自信をもてるようになりました。たぶんもっとも大きく変わったのは、レイチェルの睡眠に対する見方です。もうたいした問題ではなくなったのです。

 振り返ってみると、なぜあれほど深刻に考えていたのかわからないと彼女は言います。今は、睡眠がいつも完璧でないのはわかっているけれど、波があってもかまわない、というのです。そしてこの心境の変化こそが、本当に持続的なアプローチの鍵なのです。

<TEXT/アンディ・プディコム(Andy Puddicombe)>

イギリス保険医療委員会公認の臨床瞑想コンサルタント。元仏僧。大学在学時に僧を志しアジアに旅立つ。世界各地の寺院や僧院で修業を積んだのち、チベットの僧院で正式な仏僧となる。2004年にイギリスに帰国 © David Locke

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