タイ市民5万人が反政府デモ。タブーの「王室批判」まで噴出か
非常事態宣言が5度目の延長
バンコクにある在タイ日本国大使館も、在留邦人に対して、「不測の事態に備え、政治集会が行われている現場周辺には近づかないように」勧告している。
なぜ、タイの若者たちはこれほどまでに反政府の声を上げているのだろうか。その背景には、経済格差や失業といった社会経済的な不満、王族や政治家、政府幹部との記録権益層に対する強い憤りがあり、新型コロナウイルスの感染拡大がそれに追い打ちを掛けている。
タイ政府は8月25日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために施行されている非常事態宣言を、9月30日まで1か月間延長することを決定した。非常事態宣言は3月26日に初めて発令され、今回で5度目の延長となる。新型コロナウイルスはタイで猛威を振るってわけではないが、政府は要警戒の姿勢を崩しておらず、これが皮肉にも若者たちの経済的不満を高める結果となっている。
他国のケースに似ている
こういった事情は現在ベラルーシや中東各国で起こっているケースと非常に似ている。それぞれの国で事情は異なるにせよ、これまでの前例主義や権威主義、既得権益を打破しようとする若者たちの懸命な姿は近しいものを感じる。
最近、菅義偉内閣で行政改革・規制改革担当大臣に就任した河野太郎氏も、就任会見で「今、午前1時で各大臣がそれぞれの役所で就任会見をやっていれば今頃みんな寝ている。これは前例主義、既得権、権威主義の最たるもので、こんなものはさっさと止めたほうがいい」と発言している。
日本の若者は政治的関心が低いと言われるが、いつかは日本国内からもこういった声が挙がるようになるのだろうか。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>
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