政府ゴリ押し「ワーケーション」は日本社会に根付くのか
『ハケンの品格』は時代を捉えている?
最後に、少しだけ毛色の違う話を。働き方についての本質を考える機会として13年ぶりに放送された『ハケンの品格』にふれたい。
同シリーズが初めて放送された2007年当時と現在では、社会の状況もだいぶ変わった。当時は、企業内での正規雇用と非正規雇用の対立が大きく注目されていたが、現在は「同一労働同一賃金」の導入などで是正する動きもみられる。
一方で、今回のシリーズについてはどうも「働く人ドラマの限界点」を感じる瞬間もあるのだ。理由として大きいのは、かつて描かれていた「不安定な非正規雇用者」のイメージが変化してきたことだ。
望んで非正規を選ぶ人が増加
たしかに、アルバイトやパートなども含む非正規雇用者の悲哀が作品の土台にあった。しかし、生き方の多様性が求められる現在では、むしろ望んでその道を選ぶ人たちもいて、総務省統計局が発表した2019年の「労働力調査」では「自分の都合のよい時間帯に働きたいから」とする男性が187万人で、前年比で16万人増加したと出ている。
一時期取り上げられていた「ブラックバイト問題」などへの対応を図る企業も出てきたが、反対に、かつては「安定」の代名詞だった正社員の人たちが苦しんでいるケースも見受けられる。
昨今は「ジョブなきメンバーシップ」という言葉に代表されるように、企業や組織への帰属意識が強調される場面もある。正規雇用であるからこそ、会社への滅私奉公を求められ、自由を得られない人たちもいるのだ。
ドラマ自体はたしかに面白いのだが、「時代に合った番組かどうか」については色々と思い巡るところもある。
<TEXT/働き方評論家 常見陽平>