米中対立が、後戻りできない状況に…“戦争”はありえるか?
大統領選の結果で軟化する可能性も
日本からすると、中国は極めて異常な行動を取っているように見えるが、中国もコロナ禍の他国の反応を見極め、戦略的に海洋覇権を進めている。
だが、外交関係にまで踏み込み始めた米中対立はもう後戻りできない所まで来ている。こういった緊張悪化の長期化が、東シナ海や南シナ海で衝突するリスクを上げることが懸念される。
いずれにせよ、11月の米大統領選の結果によって今後4年間の米中関係は大きく左右されることになる。選挙戦では野党・民主党のジョー・バイデン前副大統領が、現職のドナルド・トランプ大統領をリードする展開となっているが、バイデン氏が勝利すると、中国に批判的な態度は変わらないとしても、今の状況からは変化が生じる可能性もある。
一方、トランプ大統領としても、新型コロナウイルスによる壊滅的なダメージによって、お得意の経済分野でアピールできなくなり、反中姿勢で支持を拡大しようとしている。仮に選挙戦で勝利すれば、現在の反中姿勢からは態度を軟化させる可能性もある。
難しい局面を迎える日本
しかし、対立の程度はその時々によっても違うだろうが、米中双方を対立軸とした構図は今後も変わらないだろう。そのような状況においては、日本としては難しい舵取りを余儀なくされる。
日米同盟を基軸とし、安全保障上の立場は変わらないにしても、実際、経済や貿易の面でどこまで米国と一緒に行動を取れるかは分からない。これまでの中国との経済貿易関係を考えると、政治と経済の二面性を持つ米中対立の中では、どこかでバランスを取らざるを得ないのが実状だろう。
米中対立が深まれば深まるほど、安全保障上の立場は変わらないにしても、日本は難しい局面を迎えることになる。今後の米中対立の行方が懸念される。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>
12