北朝鮮がいよいよ崖っぷちに…“爆破”に走った金正恩の焦り
自らへの批判をかわす狙い
その内容が国民や兵士に知られるとなると、金正恩氏が国内からの反発・抵抗を恐れることは想像に難くない。ビラ散布によって、北朝鮮メディアからは市民が韓国に強く憤るシーンが繰り返し報道されるが、金正恩氏としては、国民の心の中に溜まっている不満や怒りの矛先を外に向け、自らへの批判をかわしたい狙いがある。
金正恩氏は現在(2020年6月時点)で36歳、健康不安でどうなるか分からないが、普通に考えれば、今後30年から40年は指導者の地位に居座れるだろう。しかし、北朝鮮もどんどんと若い世代が国家を主導するようになる。そういった若い世代とどう付き合っていくかも、金体制の存続にとっては大きな課題である。
一方、今後の北朝鮮の行方に関しては、やはり11月の米大統領選が大きなポイントだ。金正恩氏はドナルド・トランプ大統領の再選を望んでいる。米朝交渉は停滞しているが、金正恩氏にとってトランプ大統領は「3回も会ってくれた米国大統領」である。
米大統領選の結果によっては…
当時のジョージ・W・ブッシュ大統領は、北朝鮮をイラク、イランと共に“悪の枢軸”と名指しして非難し、バラク・オバマ前大統領は北朝鮮が核開発を放棄するまで無視し続けるという“戦略的忍耐”政策を採り、北朝鮮のリーダーと会うことはなかった。
そして、現在、大統領選の支持率でリードしている民主党のジョー・バイデン氏は、オバマ政権の元副大統領であり、同氏が勝利すれば、米国は再び戦略的忍耐に回帰するかも知れない。
そうなれば、北朝鮮が以前のように瀬戸際外交に再び本腰を入れるだけでなく、中国が北朝鮮への影響力拡大をいっそう進める可能性もある。今後も北朝鮮を巡る情勢からは目が離せない。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>
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