なぜ人は自粛要請でもパチンコに通うのか?依存症の恐怖を専門家に聞いた
ギャンブル依存症の人の嘘が1番上手い
――依存症から完全に回復できたわけではなかった。
斉藤:あらゆる依存症のなかでギャンブル依存症の人の嘘が1番上手いと思います。あらゆる嘘をついてお金を借りてきたから、嘘が洗練されていますよね。もしかしたら、お父さんに詫びたいというのは本当の気持ちだったのかも知れない。けれども、どこかで強迫的ギャンブラーのスイッチが入ってしまったんでしょうね。
その後、結局治療も中断してしまいました。私自身も、自らの治療プログラムやかかわりによってここまで回復してくれたんだと、その関係性に酔ってる部分がありました。依存症という病は、関わる人に対しても共依存という「酔い」を与えてくれる不可解で巧妙で強力なものなんです。今振り返ってみると見事に騙されたなと思います。
今後も患者とさんと伴走したい
――これからアフターコロナということで、社会は急激な変化を迎えようとしています。新たな依存症が顕在化することも考えられますが、ソーシャルワーカーとしてどのようにお考えでしょうか。
斉藤:ソーシャルワーカーの仕事というのは、単に病気を治すということに重きを置くのではなくて、「関係モデル」や「社会モデル」で患者さんを見ていきます。つまり、依存症という病を治療により治せば解決するんだという「疾病モデル」ではなくて、社会や環境、人との関係性のなかでその個人に病理が現れているという捉え方をする。
アルコールであれ、薬物であれ、ギャンブルであれ、人は1人では依存症になりません。依存症とは人間関係のなかで病んでいき、そして、人間関係のなかでしか回復していかない病気です。今後も今までにない依存症問題が外来に持ち込まれたとしても、人と人のかかわりを通して患者さんと伴走できる専門家でありたいと思います。
<TEXT/目黒川みより>