北朝鮮「金正恩重病説」の裏で、日本にとって最悪のシナリオは…
もしも「中韓朝」同盟が構築されたら?
また、韓国が従中・親北路線(中国に従い、北との宥和を進める)を取り、「中韓朝」同盟のような形が構築されるのであれば、日本はきわめて厳しい立場に追いやられる。
在韓米軍の撤退、従中・親北路線が進めば何を意味するのか。それは、朝鮮戦争以降、南北を隔ててきた北緯38度線が、日韓両国の境界である釜山・対馬ラインまで南下することを意味する。現在の米中2大国時代において、冷戦の名残であった北緯38度線は、事実上、米中間の勢力圏の境界線のようなラインとなっている。
そうなれば中国の朝鮮半島全体への影響力拡大もいっそう進むだろう。経済圏構想「一帯一路」によって、アジア・アフリカ諸国が債務の罠に陥り、中国から離れられなくなっているように、韓国を影響下に置くことは想像に難くない。
日本海の安全保障を考える必要が
そして、朝鮮半島全体が中国にとって宥和の半島になった場合、日本はいよいよ日本海の安全保障を考える必要性が出てくる。
日本海は中国にとって北極海航路の構築に向けて重要な海域であり、パキスタンのグワダル港やスリランカのハンバントタ港のように、北朝鮮や韓国の東部で湾岸建設などを強化するかもしれない。
中国も日米同盟に真っ向から衝突する野心的な政策・行動は取らないと思われるが、日本にとっては、五島列島から対馬列島、隠岐の島、佐渡島、北海道へと伸びる海上防衛ラインの重要性がこれまでになく増すことだろう。
日本の戦後の繁栄は、いわば米国が世界ナンバー1の大国であり続けてきた国際政治の依拠しいる(もちろん日本人の努力も大きいが)。米国の力が相対的に低下し、中国の影響力が高まる世界においては、日本も今までにない世界を考え、いかに政治経済的な利益を守るかを真剣に考えていかないといけない。
<TEXT/イエール佐藤>
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