出社命令は拒否できる?命より大事な会議やハンコはあるのか
状況によっては処分が通らないことも
たしかに、従業員の違反行為に比べて、懲戒処分が合理的理由を欠いている(重すぎる)場合は、会社の懲戒処分は無効になります。
「例えば『5分の遅刻で50%の減給』は明らかにやりすぎですよね。そこが『社会通念上相当でない』というわけです。
・それほど重要でない会議への出席を要求
・役職者ではない一般の従業員に対する出社指示
・オンライン会議で実行できるにもかかわらず、無理やり出社を指示
上記の場合において、従業員が出社を拒否したことを理由に会社が懲戒処分をしたら、その戒告処分は不合理かつ不相当と言える可能性があります。反対に、役職者レベルの従業員が会社の命運を分けるような非常に重要な商談への出席を拒否した場合は、会社が懲戒処分をしても不合理かつ不相当にはならないかもしれません」
「書類に印鑑を押すため」あるいは「月末の経費の精算のため」に出社せざるを得ない人もいると思います。これは不要不急の業務にあたるのでしょうか?
「ハンコを押すために出社」はどうなの?
「『不要不急』の定義が法的な概念ではないので判断が難しいですね。もっとも、月末の経費はオンラインでも可能でしょうし、今は印鑑もオンラインで捺印できる時代です。ですから、会社の内部処理の問題にすぎず、一般的に見ればそれほど緊急性が高いとは言えないのではないでしょうか。
法的に言えば、仮に印鑑を押すため、あるいは月末の経費精算のための出社を拒否したことによって処分を受けること自体は、不合理かつ不相当な懲戒処分にあたりうると思われます」
「ハンコを押すため」「定例会のため」などで出社を求められた場合、それが本当に不要不急な出社なのか、上司とも相談してみてはいかがでしょうか。少なくとも、混雑した電車に乗ることは絶対に避けたほうがいいです。
もし、出社命令をはじめ、会社のコロナ対策がおかしいと思ったら、日本労働弁護団の相談窓口などに相談してみましょう。
欧米では、会社にまともなコロナ対策を求めて、集団で労働拒否するストライキが相次いでいます。自分の身を守るには、会社に逆らっていいのです。
<取材・文/林加奈>