新型コロナが蔓延、中国で活躍する“オンライン医療”の実態…日本でも普及するのか
日本ではハードルの高い「オンライン診療」
とはいえ、日本ではオンライン診療については慎重な見方が多く、普及にはまだまだ時間がかかりそうだ。
厚生労働省は2018年3月、オンライン診療についてのガイドラインを策定し、「初診は、原則として直接の対面による診療を行うこと」などの遵守すべき項目を提示した。オンライン診療は対面に比べ、誤診や見落としの可能性が高まるため、あくまで慎重に取り入れようという姿勢だ。薬の転売などの恐れもある。
たしかに、対面で顔を見ながら診察するほうが良いのは間違いない。だが、世の中には“病院に行きたがらない人”というのが一定数いる。病院で対面診療を受ける前段階として、気軽にオンライン診療が受けられるのは、決して悪いこととは思えない。車椅子で移動しにくい人や、病院が近くにない過疎地にとっても、救いになるはずだ。
誤診や見落としのリスクがありうることを周知した上で、最終的には患者の自己責任のもと、活用すればいいのではないだろうか。薬の転売については、本人確認の徹底や、転売行為を厳罰化するなどして対応できる。
武漢市政府がいち早く窓口を設置
中国のオンライン診療の現状は、日本の厚労省が発表したガイドラインに違反しているケースが大量にあるに違いない。だが、それでもアプリの画面からは「新しいテクノロジーを積極的に使い、より良い社会をつくっていく」という強い意志を感じる。
2020年の春節シーズンに世界を震撼させた新型肺炎(COVID-19)に対しても、 オンライン診療は積極的に活用された。武漢市政府がオンライン診療の窓口をいち早く設置し、市民に利用を呼び掛けたのである。
オンライン診療の窓口は地元新聞社「長江日報」のウィーチャットが担っており、「37.5度ほどの熱があるが、これはコロナウイルスか?」「胸焼けがするが、コロナウイルスが原因か?」などの質問が大量に寄せられており、それぞれ医師が回答している。患者は電話番号の登録(電話番号は実名と繋がっている)が義務付けられているため、いい加減な投稿はできない。回答する医師は、本名と所属を明らかにしている。
オンライン医療は過信は禁物だが、こうして実名登録などを義務付けるなどすれば、十分活用の余地があると思われる。
<TEXT/西谷格>