「ブルース・リーになりたかった」鬼才・三池崇史監督が語る創作の最前線
三池崇史監督が放つ最新作は『初恋』! 新宿歌舞伎町を舞台に、身寄りのないプロボクサーのレオ(窪田正孝)が、ひょんなことからヤクザに捕らわれている少女モニカ(小西桜子)を救ったことで、ともにアウトローたちの争いに巻き込まれていく三池流ラブストーリーです。
本作はすでに2019年カンヌ国際映画祭監督週間正式出品を始め、世界29の映画祭へ出品し、アメリカの映画評論サイトとして有名な「ロッテン・トマト」では97%フレッシュの評価を受けるなど、早くも驀進(ばくしん)中です。
そんな“世界の三池監督”を直撃。「裏切りのない安心できる暗闇(映画館)なんてつまらない」「子どもの頃はブルース・リーになりたかった」と三池語録が続々飛び出しました。
今は作る側もジャンルに捉われている
――オリジナル作品であり、鬼才・三池崇史“初のラブストーリー”だと話題になっています。ラブストーリーを核に置いた作品を、もともと作りたいと思われていたのでしょうか?
三池崇史監督(以下、三池):今はジャンルという捉え方に、だんだん作る側も縛られてきている感じがします。「これは何映画である」みたいな。アウトロー映画だったらアウトロー映画のセオリーがあって、こういう風にやらなきゃいけないと。
でも登場人物たちがジャンルを超えちゃう瞬間ってあると思うんですよ。別にそこを目標としていたわけじゃないけど、違うところにたどり着いちゃうものがいいなという感じはありました。
――結果的に対極にあるアウトローとラブストーリーが取り合わされていったと。
三池:たとえば、ラブストーリーが途中で一気に地獄に落ちていくことだって、あるわけでしょ。映画は何が起こったってかまわないはずなのに、逆に映画のなかではその自由がない。その自由がないと、観るほうは安心かもしれないけど、それってつまんないよねって思う。裏切りのない安心できる暗闇なんてさ。
リサーチして、そこに向けて作るのは変
――確かに今作は『初恋』という印象からは裏切られる作品ですね。映画館に来て初めて体験できる。
三池:観に来てくれた人に楽しんでもらえるといいなと。ただ、どうすれば楽しんでくれるかというのをリサーチして、そこに向けて作る映画というのは変ですよね。リサーチによって登場人物のキャラクターを修正していくとかは気持ちが悪いと思う。
――海外、特にハリウッドでは公開前に試写会を開いて、リサーチに基づいてラストを変えたりしますよね。
三池:日本においても外国資本だったりするとやりますよ。私も経験があります。ファンじゃなく、どんな映画なのか全然知らない人たちを呼んで観てもらって採点するんです。
そこにアメリカとかから審査する方が来て、すごい数の項目を採点してもらって分析するわけです。それで、一生懸命いろいろ意見を言われるんですけど、「あぁ、はい。オッケー」「はい、オッケー」って流して、僕は聞いたことないです(笑)。