「中国人は入店拒否」新型コロナで、飲食店の対応は違法になる?
飲食店の「出禁」は違法にあらず
――店やホテルに不利益となる客を入店拒否するいわゆる「出禁」とはどう違うのですか?
後藤:いわゆる「出禁」は、店やホテルにとって何らかの理由で不都合な客の入店を拒否することです。例えば、過去に店で飲んだ客が暴力、器物損壊などの問題行動があった場合には、あくまで店やホテルの契約自由の原則や営業の自由が優先されます。
何の落ち度もない外国人を入店拒否することは人種差別にあたるので違法になりますが、問題行動を起こす客や店やホテルにとって不利益をもたらす客を「出禁」にするのは違法にはあたりません。
持病が悪化したら損害賠償を請求できる?
――ダイヤモンド・プリンセス号で一時、乗客の薬が足りないという報道がありましたが、万が一薬が飲めなくて持病が悪化した場合、その治療費を船の運航会社に請求できるのでしょうか?
後藤:この場合は請求できない可能性が高いです。薬を飲めずに持病が悪化した場合の医療費は、損害賠償というかたちで請求しますが、そのためには相手の「故意または過失」が必要です。
今回、乗客がダイヤモンド・プリンセス号に待機させられているのは、主に国である行政の指示によるものであると考えられます。そのため、運行会社に故意又は過失があるとはいえず、国や行政に対して請求する余地があると思われます。これを「国家賠償請求」といい、国民が国を相手に損害賠償を請求できます。
もっとも、今回の件は新型コロナウイルスの感染を可及的に防止するという目的を達成するための措置であり、乗客を待機させることはやむを得なかったと判断される可能性が高いです。そうすると、国側がとった一連の対応に違法性はなく、乗客は国に対して損害賠償請求できない可能性が高いと言えます。
=====
中国への渡航歴がない人や中国人との濃厚接触がなかった人にまで感染は拡大しており、もはや誰が感染してもおかしくない状態になっています。
感染を予防するためには、手洗い、うがい、マスク着用といった対策を徹底するしかなく、それでも感染する可能性がゼロではないのが難しいところです。世界を巻き込んで混乱が続いていますが、いつまで続くのかとても気がかりですね。
<TEXT/林加奈>