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「浅草から東京タワーまで」という依頼も…人力車を引く仕事のやりがいとは

学び

 東京・浅草の風情ある街中をかけめぐる人力車は、日本の“粋”として海外からの観光客にも親しまれています。そして法被(はっぴ)や股引といった服装をまとい人力車を引く人たち、いわゆる“人力車夫”の方々もまた、威勢のよさを感じさせてくれる存在です。

人力車夫

浅草で人力車夫として活躍するこっちゃんさん(仮名)

 しかし、人力車を引く仕事の内容は、一般的にあまり知られていません。そこで、今日も汗を流しながら浅草をひた走る人力車夫の集団「人力車 壱~ichi~」に所属する30代前半の現役車夫・こっちゃんさん(仮名)に、これまでの経歴や仕事の魅力を語っていただきました。

浅草を走る人力車夫にひと目ぼれ

人力車夫

人力車を引きながら雷門前の通りを疾走するこっちゃんさん

 こっちゃんさんが人力車夫の仕事へ就いたのは、今から約12年前(2008年)。

 伝統産業としてみると、一般的には「徒弟制度があるのか」と想像したくなりますが、きっかけは意外にも「求人サイトでした」と振り返ってくれました。

「人力車の仕事を始めるまでは、学業に励みながら飲食店などのサービス業で働いていました。その後、仕事を辞めてから次に何をしようかと考えていたところ、求人サイトでたまたま見かけたのが、人力車夫だったんです。

 何事に対しても好奇心が旺盛な性格だったので、どんな仕事なんだろうと思ったら、下調べとまではいわないものの、すぐ浅草に見に行ったんです。そしたら街中を走る先輩車夫の方々を見て、ひと目惚れ。その日のうちに人力車夫を募集していた会社に電話していました」

 後日、面接へ進み合格したこっちゃんさんは、人力車夫としての第一歩を踏みはじめました。先述の「徒弟制度」のイメージからも連想されるとおり、背中を見て学ぶイメージもありますが、初めに研修を通して、人力車にまつわる基礎知識や経験を蓄えていったと話します。

「入社して初めの1か月間は、研修を通して様々なことを学びました。法被やその下着になる腹掛け、長股といった服の着方から、人力車の車輪やお客さんを乗せる台座など各部の名前、浅草の街中にある歴史など必要な知識を、教官となる先輩からとにかく教えてもらいました。その過程はたぶん、教習所を想像してもらえれば分かりやすいかもしれません」

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