アップルを陰で支えた「デザイン経営」とは?日本初の専門講座も開講
経営陣にデザインを統括できる人材を
デザインの持つ創造性や、社会を広義に捉え、時代に必要とされるものを読み解く審美眼が、これからの経営には必要とされるのだ。しかし一方で、永井氏は「企業経営に参画する者は必ずしもデザイナーである必要はない」とも語る。
「デザイン思考は、デザイナーだけではなく、非デザイナーでも身につけることができるため、必ずしもデザイン責任者がデザイナー出身である必要はありません。
TCL(多摩美術大学クリエイティブリーダーシッププログラム)も、このような背景から立ち上げたものであり、ビジネルとデザインを架橋する力やアイディアを具現化する力を養えるような教育プログラムを展開する予定です」
一朝一夕にはできないデザイン経営
経産省と特許庁による「デザイン経営宣言」から、およそ1年半が経った。高度デザイン人材の育成を目標に掲げられたものであるが、果たして企業への浸透は進んでいるのだろうか。
「デザイン経営に関心を示している企業は増えていますが、一方で、それ自体は明日できるものではなく、概要を理解するとともに、デザイン思考を咀嚼(そしゃく)して、何かのカタチとしてアウトプットしないと、真の意味で実践できているとは言い難い。日本の産業界は、方法論が先行し、型通りにやればイノベーションが起こせると思いがちなところがあるので、知識創造の偏りを正し、社会実装するまでに必要なプロセスを示すことが美術大学など教育機関の役割だと考えています」