東京ディズニーランド、夢の国が「パワハラ訴訟」を抱える複雑な内情
2)社長のキャラ:明確な悪評はナシ
オリエンタルランド社の株主構成は下記の通りで、社長個人の持ち株はほとんどないといって良いです。いわゆるサラリーマン社長であると言えます。
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株主名/持株数(千株)/持株比率(%)
京成電鉄株式会社/72,628/22.06%
三井不動産株式会社/30,757/9.34%
千葉県/13,200/4.01%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)/10,876/3.30%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口)/8,980/2.73%
みずほ信託銀行株式会社 退職給付信託 みずほ銀行口
再信託受託者 資産管理サービス信託銀行株式会社/7,495/2.28%
第一生命保険株式会社/6,560/1.99%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口7)/4,478/1.36%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口4)/4,442/1.35%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口5)/4,431/1.35%
※2019年3月31日時点
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有名企業であることから、社長個人のインタビュー記事は非常に多い一方、明確な悪評は特に見られませんでした。
3)社風:従業員の8割超が「準社員」
1)、2)まで調べると、「経営状態もよく、設備投資にも積極的で、株価も順調に伸びている超優良企業」としか言いようがないのですが、ここからがこの記事の本番です。最後まで読むと考えさせられますよ……。
まず、この会社の場合、正社員と「準社員」を明白に分けています。準社員とは、一般的にはパートやアルバイト、契約社員といった「非正規社員」を指します。本来であればパート・アルバイト・契約社員であっても労働基準法による法律の保護の対象に含まれるのですが、意図的にその運用が歪められているケースがあります。
オリエンタルランドの場合、この「準社員」というのは何かというと、「パーク運営に従事する従業員」であり、アルバイトまたは契約社員として採用されている方々のことを指します。
企業公式サイトでも明確に分けて書いており、従業員のうち、社員は3411人、準社員は1万9697人(2019年4月1日時点)と、全体のうち85.2%が準社員で構成されています。準社員の方は具体的には、パーク内でアトラクションの進行をしたり、パレードでダンスをしたり、レストランで働いていたり、パーク内のゴミ清掃をしたり……と、様々なお仕事をしています。そう、パークに遊びに行くと必ず出会い、思い出づくりに確実に貢献している、あの笑顔が素敵な人々のことです。
ちょっとこの段階で「嘘だろ……」感がありますが、嘘ではありません。キャスト専用の採用サイト内では、全職種がアルバイト採用前提の時給基準での提示です。
パフォーマーの雇い止めが労働問題に
また、準社員の方々の労働条件は決して良いとは言えず、有志で労働組合を結成したり、実際に複数件の裁判が起こされたりしています。まず、2014年2月、ショーに出演していたパフォーマーが雇い止めされたことを期に労働組合「オリエンタルランド・ユニオン」が結成されました。
本日は全国ユニオンアクションにて20回目の舞浜行動でした。沢山のユニオンの方の応援も受け、沢山のチラシも受け取って頂きました。キャストの皆さん、指導確認書は書かなくても良いと会社はハッキリ言いました。自分の身を守るためにも理不尽だと思ったら決してサインしてはいけません。 pic.twitter.com/G3BK02xJf8
— オリエンタルランド・ユニオン(OLU) (@OlcUnion) 2019年10月31日
パフォーマーの雇い止め問題は2015年8月に解決しましたが、それ以降も、毎年春闘で「時給アップ」などを要求するなど、準社員の方々の雇用環境改善活動を継続的に続けています。個別の労働交渉では成功事例があり、一度提示された解雇の撤回も実現できたようですが、春闘要求に対しては、オリエンタルランド社からの回答は無いようです。
2018年11月に行われた初公判では、契約社員の女性2人がオリエンタルランド側に、従業員への安全配慮の義務を怠ったとして、約755万円の損害賠償を求めて提訴しています。この公判は毎日新聞をはじめとした、複数メディアで取り上げられています。
また、複数のメディアが報じたのは、原告女性の一人が、飲み会の席で上司のマネージャーに「楽屋でぜんそくが出る」と相談した際には「病気なのか、それなら死んでしまえ」や「30歳以上のババアはいらねえんだよ、辞めちまえ」と言われたという信じられない事実です。なお、2019年10月現在も裁判は継続中で、まだ解決していません。
上記の事実をふまえると、春闘要求や団体交渉を行っても明確な改善が見られないため、提訴に踏み切ったと考えられます。労働関係に限らず、裁判という仕組み自体が数年単位で時間を使い、費用も数十万・数百万円単位でかかります。そのため、普通に暮らす人にとっては、上場企業を相手取って裁判を起こすこと自体が非常に重い決定です。それだけ腹に据えかね、改善を求めたい事態があったと考えるのが自然です。