Uber Eats配達員の商品投げ捨て事件に、ベテランからは「気の毒」の声も
雨天時には「インセンティブ」
10月12日、13日にかけて日本列島を直撃した台風19号のように、荒天時の配達はどのようなものなのだろうか。
「今回のような大型台風など、明らかに危険な場合はUber Eats自体のサービスが一時的にストップされますが、普段、雨や風が強い日は基本的に依頼が増えます。また、配達員もスリップなどの危険から配達を控える人が多く、Uber側が『雨の日に10件配達したら1500円』などのインセンティブを付けてくれることがあるため、いつもの倍稼げたりする“稼ぎ時”と捉える人も多いです」
そんななかUber Eatsは10月1日より三井住友海上火災保険と共同で傷害補償制度をスタート。これまで対人・対物賠償責任保険を用意していたが、配達員の怪我に対する補償はなかった。配達員はUberと雇用関係になく、個人事業主として働くため、労働法による保護や社会保険の範囲外となるからだ。
しかし、この制度では、配達中の事故により配達員自身が傷害を負った場合、医療費や入院費などの「見舞金」が補償される(医療費は最大25万円、死亡した場合は最大1000万円)。この制度がスタートしたことについて、尾崎氏は「本当に嬉しい」と話す。
傷害補償制度は嬉しい半面、不信感も…
「Uber Eatsは3周年になるんですが、スタートからやっていた身としては、初期の段階から補償がないっていうのはわかっていた。ただ、個人事業主とは言っても実質は雇用のような形態なので、配達中の怪我の医療費は負担してほしいな、とも。配達員仲間とUberに働きかけようとしたり、良い保険を他の配達員に紹介したり、個人的にも動いたりしていたので、大きな一歩だと感じています」
Uber側が三井住友海上に保険料を支払うため、配達員に金銭的負担はないとされているが、不信感もあるという。
「2019年5月ごろ、配達員の間で『走行距離に対して、いつもより数十円配達料を安くされているような……』っていう声が1か月間ほど相次いだんです。ちょうどユニオンができるという話が出ていた時期だったのですが、結果的にUberはアプリの不具合と認めた上で謝罪をして、差額が後日振り込まれました。Uber側が勝手に報酬を操作できてしまうので、そこはユニオン含めて、配達員個人でも注意深く見ていく必要があると思っています」
傷害補償制度のスタートなど、配達員の労働環境改善に一歩踏み出したUber Eatsだが、まだまだ課題も残るようだ。“自由に働ける”というUberならではのメリットを残しつつ、配達員が安心して働ける環境が整えられることを願いたい。
<取材・文/鴨居理子>